【11月6日 東方新報】中国の農業学者で「ハイブリッド米の父」と呼ばれる袁隆平(Yuan Longping)氏が、2019年湖南省(Hunan)「最も美しい科学技術工作者」10人の一人に選ばれ、先月28日に長沙市(Changsha)で授賞式が行われた。袁氏はハイブリッドイネ技術研究・応用・普及に貢献し、中国の水稲研究を世界最先端レベルにまで引き上げた人物だ。

 1930年北京生まれ、重慶(Chongjing)相輝(Xianghui)学院農学部を経て西南(Xinan)農学院に移籍後、卒業。専門は遺伝育種学。湖南省安江(Anjiang)農学校の教師を務めていたころ、数千万人の命が奪われた三年の大自然災害の大飢饉(ききん)を経験し、中国から餓死者を無くしたいという思いからイネ改良研究の道に入った。

 9年の研究を経て1973年、中国初の三種類のハイブリッドイネの発明に成功し、翌年、そのうちの一種「南優(Nanyou)2号」の量産を実現した。当時、「二つの平」のおかげでご飯がたべられるようになったというセリフが人々に知れ渡るが、この「平」とは改革開放の道を開いた鄧小平(Deng Xiaoping)氏と、ハイブリッドイネを発明・普及させた袁隆平氏を指す。

 1995年に中国工程院(Chinese Academy of Engineering)院士となり、ハイブリッドイネ改良研究にまい進。単位面積当たりの収穫量を飛躍的に伸ばし、味も改良され、「コシヒカリ並み」と言われるまでになった。一部ハイブリッドイネ種子は海外に輸出され、ベトナムなど東南アジアでも作付けされている。限られた作付面積で高い生産高を追求するスーパーハイブリッドライス研究は、中国のみならず、アフリカその他の食糧問題解決の鍵として期待されており、すでに国内外で数々の発明賞・科学賞を受賞している。

 2017年、世界の水稲の1ヘクタール当たりの収穫量は平均4.61トンだが、ハイブリッドライスが普及した中国の米収穫量は1ヘクタール当たりの平均収穫量は7.5トン。袁氏の研究チームが手掛けているスーパーハイブリッドライスは、すでに1ヘクタール当たりの収穫量16~17トンを実現している。袁氏は「私が100歳になる前に1ヘクタール当たり収穫量20トンの目標を実現させたい」という夢を語っている。

 袁氏のほか、油菜栽培の品種改良に貢献した中国工程院士の官春雲(Guan Chunyun)氏や、豚の体重増加を目的としたアミノアシッド栄養・代謝研究に長年従事し成果を挙げている動物栄養学者の印遇竜(Yin Yulong)氏ら、中国の食糧戦略上、重要な貢献をしてきた科学者らの受賞が今回は特に目立っていた。(c)東方新報/AFPBB News