【11月4日 AFP】サウジアラビアで働くバングラデシュ人女性が、雇い主から「無慈悲な性的虐待」を受けていると涙ながらに告発する動画がフェイスブック(Facebook)上で拡散し、貧しいアジア系出稼ぎ労働者の搾取が改めて問題視されている。バングラデシュ政府は3日、被害を訴えた女性を「できるだけ速やかに」帰国させるよう、労働者の海外派遣をあっせんする国営業者に求めた。

 動画の中でスミ・アクテル(Sumi Akter)さん(25)は、「私は長く生きられないと思う。助けてください。彼らは私を鍵付きの部屋に15日間も閉じ込め、食べ物もほとんど与えてくれませんでした。熱した油で両手にやけどを負わされました」などと訴えている。

 アクテルさんの夫は「妻を帰国させようとしたが、できなかった」とAFPに語った。動画の拡散を受け、バングラデシュの首都ダッカでは出稼ぎ労働者の待遇に抗議するデモが起きている。

 アクテルさんの動画公開に先立ち、やはり雇用主による虐待を訴えて救出を求めていた出稼ぎ労働者のナズマ・ベグム(Nazma Begum)さん(42)が、10月末に遺体で帰国した。ベグムさんの息子は死因について、病気になったのに治療を受けさせてもらえなかったとAFPに話した。

 アクテルさんもベグムさんも、病院の清掃員の仕事を紹介するとの約束で出稼ぎに行ったが、だまされてメイドをさせられていた。

 バングラデシュ当局によると、サウジアラビアに出稼ぎするバングラ女性は1991年以降で約30万人に上り、在外バングラ人の祖国への送金額の多くを占める。

 あっせん業者が女性労働者を虐待し、別の業者に売り飛ばしているとの疑惑が浮上する中、政府報道官は悪質業者の取り締まりを約束した。しかし、アブドゥル・モメン(Abdul Momen)外相は先月31日、サウジアラビアへの女性の出稼ぎを禁止することはないと言明。「被害者が出ていることは、サウジアラビアも認めている。だが、一握りの人々の身に起きたというだけで、サウジ政府が被害者を生み出しているわけではない」と述べた。

 バングラデシュの人権団体によると、主にサウジアラビアから帰国した女性110人を対象に10月に聞き取り調査を行ったところ、61%が身体的虐待を受けていたと回答。約14%は性的虐待を受けたと答えたという。また、別の援助団体によれば、サウジアラビアに出稼ぎ後に遺体で帰国した女性は、今年に入って既に48人に上っているという。(c)AFP