【10月20日 AFP】19日に行われたイングランドFAカップ(FA Cup 2019-20)の試合で、選手が人種差別的なチャントを浴び、さらにつばを吐きかけられたため、試合が中止になるという出来事があった。

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 中止になったのは7部に所属するハーリンゲイ・バラFC(Haringey Borough FC)とヨービル・タウン(Yeovil Town)のFAカップ4回戦で、選手が嫌がらせの標的にされたハーリンゲイは、ヨービルがPKで得点を決めた後の試合残り25分で選手をピッチから引きあげさせた。

 わずか5日前には、欧州選手権(UEFA Euro 2020)予選のブルガリア対イングランドの試合で、イングランドの選手が敵地の観客から人種差別を受けていたが、その矢先に国内でも同様の問題が起こった形となった。

 ハーリンゲイを率いるトム・ロイゾー(Tom Loizou)監督は、DFのコービー・ロウ(Coby Rowe)が人種差別的なチャントの標的になり、またカメルーン出身のGKダグラス・パジェタト(Douglas Pajetat)がつばを浴びたため、選手を下がらせたという。

 ロイゾー監督は英スカイニューズ(Sky News)に対して、「後半の早い時間帯にCKを得た場面で、モンキーチャント(猿の鳴きまね)があったという話を何人かの選手から聞いた」とコメントした。

「それでも我慢してプレーを続けた。すると相手がPKを得て、こちらのGKがつばを吐かれ、ものも投げつけられた」「審判がいったん試合を中断し、相手がPKを決めて、こちらの選手がネットの後ろからボールを取りにいったところで、コービー・ロウが差別的な言葉を浴びた」

 監督は、選手を下がらせるよりほかなかったと話している。

「何人かの選手の顔を見て、私自身、とても動揺した。ただ顔を見ただけでだ。それで何分か様子を見て、それからピッチへ入って選手たちを引きあげさせた」

「2、3人の選手はプレーを続けるなど到底できない状態だった。彼らが聞いた言葉には吐き気がしたし、表情はおびえていた」「若い選手たちが一部の人間から侮辱されるのを、ただ座って見ているわけにはいかなかった」

 ロウは試合後、自身のツイッター(Twitter)に「自分がこんなツイートをしていることが信じられないし、今は2019年だ。だけど僕はきょう、人種差別の被害に遭った。クラブにとって最高の一日になるはずだったのに。差別をする人間のせいで、また一つサッカーの試合が台無しになった」と書き込んだ。

 サッカー界の反差別団体「Kick It Out」は、ロイゾー監督と選手の「迅速かつ決然とした行動」をたたえている。イングランドサッカー協会(FA)も、この件を「緊急事態として」調査していくと発表している。(c)AFP