【10月19日 AFP】メキシコ治安当局は、17日に麻薬王「エル・チャポ(El Chapo)」ことホアキン・グスマン(Joaquin Guzman)受刑者の息子オビディオ・グスマン(Ovidio Guzman)容疑者(28)を一時拘束したものの、麻薬組織側の反撃により大規模な銃撃戦が起きたため身柄を解放したことを認めた。解放の判断をめぐり、アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領は厳しい批判にさらされている。

 ルイス・クレセンシオ・サンドバル(Luis Cresencio Sandoval)国防相は、西部クリアカン(Culiacan)で実施された作戦で治安部隊がオビディオ容疑者を短時間拘束したものの、反撃を受けて同容疑者を解放したと説明。作戦が「ずさんに計画された」ものだったと認めた。当局によると衝突は6時間に及び、民間人1人と兵士6人が死亡、警察官3人が負傷した。

 オビディオ容疑者は父親のグスマン受刑者が2017年に米国に引き渡された後、きょうだいと共に麻薬組織「シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)」を牛耳っている。

 クリアカンの作戦現場では17日午後、同容疑者が拘束されていた住宅を重武装したカルテルのメンバーらが取り囲み、市内各地で機関銃による大規模な銃撃を開始。恐怖に陥った住民らは身を守ろうと逃げまどい、路上では複数の車が炎上した。

 ロペスオブラドール大統領は「状況は非常に厳しく、多くの市民の命が危険にさらされていた」と述べ、容疑者解放の判断を擁護。作戦は昨年9月に米国から受けたオビディオ容疑者の受け渡し要請に基づいて行われたものだったと説明した。

 メキシコでは今週、他にも2件の銃撃戦で28人が死亡しており、治安対策ですでに苦境に立たされていた大統領にとっては悪夢の1週間となった。(c)AFP/Marcos Vizcarra