【10月18日 AFP】昨年2月台湾で、香港人の男が妊娠していた交際相手を殺害して香港に逃亡し、その結果香港政府が「逃亡犯条例」改正案を提起、ひいては大規模な抗議デモの発端になった事件の容疑者が、台湾に戻って司法の裁きを受けることに同意したと、男と面会した牧師が18日、明らかにした。

 チャン・トンカイ(Chan Tong-kai)容疑者(20)は昨年、台湾旅行中に妊娠中の交際相手を殺害したとして、台湾で指名手配されている。

 しかしチャン容疑者は香港に逃げ帰った。香港と台湾の間には身柄の引き渡しを可能にする協定がないため、台湾警察は同容疑者を逮捕することができなかった。

 この事件をきっかけに香港政府は、犯罪容疑者の身柄を、中国本土を含め同国全域への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案を提出。これが香港住民から激しい反発を呼び、結果的に大規模な抗議デモへと発展した。

 チャン容疑者は、殺害した交際相手の所有物を盗んだとして今年香港で有罪判決を受け、現在短期の禁錮刑に処されているが、来週には釈放される見通し。

 チャン容疑者の元を定期的に訪れて面会している英国教会系の牧師の話によると、同容疑者は台湾当局に自ら出頭する意思を示しているという。

 同牧師がAFPに明かしたところによると、チャン容疑者は受刑中にキリスト教に改宗し、台湾人弁護人らによる弁護を依頼。

 容疑者は「被害者の遺族に対し深い後悔の念を示すとともに、香港にこのような問題を引き起こしたことを申し訳なく思っている」と話した牧師は、容疑者の決断を「勇敢」と形容した。

 台湾では殺人罪に死刑が適用されることもあるが、チャン容疑者が自首すれば極刑は免れるのではないかと、同牧師はみている。(c)AFP