【10月18日 AFP】世界で確認されているアリ1万2000種の中で最も「足が速い」のは、1秒間に85.5センチ移動するサハラ・シルバーアント(学名:Cataglyphis bombycina)だとする研究結果が17日、発表された。

 このアリは、自分の体長の108倍に相当する距離を1秒間で走破する。まさに「昆虫界のスプリンター」だ。その速さを「世界最速の男」ウサイン・ボルト(Usain Bolt)に換算すると、1秒以内に200メートルを駆け抜けるのと同じことになる。

 サハラ・シルバーアントの偉業がさらに目覚ましいのは、気温60度に達する白昼の砂漠でこのトップスピードを記録している点だ。ただ、巣の外での1日の活動時間はわずか10分。その間に暑さで弱ったトカゲなどの餌を探し、巣穴へと運び込んでいる。

■高速ギアはギャロップ走行

 科学誌「Journal of Experimental Biology(実験生物学ジャーナル)」に発表された研究によると、ドイツのウルム大学(University of Ulm)とフライブルク大学(University of Freiburg)の科学者4人は、北アフリカ・チュニジアの砂漠で野外実験を行った。

 実験ではアリの巣の入り口にアルミ製の「レースコース」を接続し、アリをおびき出すため出口に当たるコース反対側の端に餌を置いた。そして、コース内をアリが行ったり来たりする様子をカメラで撮影した。

 サハラ・シルバーアントは長さ5ミリの付属肢を振って加速し、最高速度は秒速130センチに達していた。「高速ギア」に入ると、歩幅は通常の4倍に伸びることも分かった。

 もう一つの発見は、最速時には通常のランニングからギャロップ走行に移行し、6本の足すべてが宙に浮く瞬間があることだ。

 また、研究チームが掘り起こした巣をドイツへ持ち帰り、冷涼な気候下でのアリの動きを調べたところ、予想通り、気温が10度程度にまで下がるとアリの移動速度は3分の1ほども遅くなったという。(c)AFP/Marlowe HOOD