【10月4日 AFP】ウクライナ東部で2014年から続く紛争をめぐり、ウクライナ政府と親ロシアの分離派、ロシア政府の代表が今週、和平案に基本合意した。親ロシア派が実効支配する東部地域に「特別な地位」を付与するとの内容に、首都キエフでは抗議デモが発生。ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領(41)は3日、市民に平静を呼び掛けた。

 今回合意に至った和平実現へ向けたロードマップでは、ウクライナ憲法に基づく自由で公正な選挙を実施することを条件に、東部の親ロシア派地域に「特別な地位」を付与するとしている。

 しかし、親ロシア派地域に広範な自治権を認めるかどうかは依然として論争の火種となる難しい問題で、合意発表を受けて国内では怒りが噴出。キエフ中心部では2日、抗議デモに1000人以上が集まった。6日にもデモが予定されている。

 冷戦(Cold War)終結後の東西対立としては最悪の規模となっているウクライナ東部紛争は、ウクライナのクリミア(Crimea)半島を2014年にロシアが併合したことから起きた。これまでに約1万3000人が犠牲となっている。

 今年5月に就任したゼレンスキー大統領は3日、国民に向けてビデオ演説し、「全てのウクライナ人に憲法で保障された抗議権を尊重する。皆さんの声は届いている。信頼してほしい。私は決してウクライナを裏切らない」と呼び掛けた。

 その上でゼレンスキー氏は、東部ドンバス(Donbass)地方の地位を定める新法の起草には、ウクライナ社会の全ての人が参加することになると強調。「ドンバスはウクライナだと国民全員が理解している」と述べた。

 ゼレンスキー氏とロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、東部紛争の終結を目指して今月、初会談に臨む。東部地域の地位に関する基本合意は、仏独を加えた4か国首脳会談で和平を協議する条件としてロシアが要求していた。

 今回の合意がウクライナ・ロシア間の落としどころになり得るとの見方もあるが、ロシアに懐疑的な人々の間では、長引くウクライナ危機に辟易(へきえき)した西側諸国がゼレンスキー氏に対ロシアで譲歩を迫る懸念が膨らんでいる。(c)AFP/Oleksandr SAVOCHENKO