■「自動車の鉄でもかめばいい」

 自動車などの製造業は、日本の名目経済成長率(GDP)の約20%を占め、経済成長のけん引役として期待がかかる。一方、農業がGDPに占める割合はわずか1%だ。

 米政府は今回の貿易協定を「第1段階」と位置付けており、「第2段階」では自動車も交渉材料に含める意向を明らかにしている。米政府関係者は交渉のカギを握る争点として、日本の対米自動車輸出に最高25%の高い関税を課す可能性を今後もちらつかせていくだろう。

 東京大学(University of Tokyo)の鈴木宣弘(Nobuhiro Suzuki)教授(農学)は、「(日本の交渉官の)考えは、もし米国に自動車で脅されたら農業を差し出す、ということ」と述べ、日本政府が自動車産業を守るため農業で譲歩したとの見方をAFPに示した。「その結果、国内農産品の生産額はさらに減っていく」

 大平畜産工業の川合社長も、この見解に同調。「食料安全保障や食料自給率について、国はどう考えているのか」「もう牛乳の値段だって、水より安くなっている。それはおかしいでしょう」と語り、次のように付け加えた。

「もし国が、食料(需要)の100%、牛乳の国内消費の100%輸入でいい、というなら、それでいい。もし食糧危機が起きたら、自動車の鉄でもかめばいい」 (c)AFP/Kyoko HASEGAWA