■将来への不安

 25日に米ニューヨークで最終合意に至った日米貿易協定では、日本が72億ドル(約7800億円)相当の米国産食品・農産品について関税を撤廃・削減することになっている。政府は国内農家への支援を約束しているが、酪農家の間にも先行きを不安視する声がある。

 神奈川県内のある酪農家は、貿易協定について「われわれのような30頭から50頭の零細の酪農家には、さらに追い討ちをかけることになる」とAFPに語った。

「飼料の価格も高騰して、(働き方改革で)人件費も上がり、(中略)いろいろなコストが上がっている中で、この商売を続けていけるのかどうか、さらに心配の種が増える」とこの酪農家は話し、「多くの酪農家の方が、年齢も高齢化していく中で、もう酪農は辞めよう、と決断するのではないか」と続けた。

 日米貿易協定は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領政権がTPPを脱退し、日本の主要輸出産業である自動車に対する追加関税を示唆したことで、日本側が交渉のテーブルに付かざるを得なくなった経緯がある。しかし、日本政府が国内の農家を保護するため交渉を尽くしたのか、国内の専門家らは疑問視している。

「日本は米国からもっと譲歩を引き出すことができたはず。なぜなら、米国が勝手にTPPを離脱して(その後)交渉したいと言ってきたのだから」。丸紅経済研究所(Marubeni Research Institute)出身で、資源・食糧問題研究所(Natural Resource Research Institute)を立ち上げた柴田明夫(Akio Shibata)代表は、そう指摘した。

「TPP並みの関税引き下げであっても、高齢化が進行している日本の農家の中には、先行きの見通しが立たないとやめる決断を取る人たちも出てくるのではないか」(柴田代表)