【9月26日 AFP】米国でドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の弾劾に向けた正式な調査がついに開始される。引き金となった最新の疑惑は、トランプ氏が憲法に違反し、ライバルである民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)氏に打撃を与えるためウクライナに支援を求めたとされるものだ。トランプ氏が直面する疑惑の数々を以下に列挙する。

■口止め料

 ニューヨーク州の検察当局は、トランプ氏の元顧問弁護士マイケル・コーエン(Michael Cohen)受刑者が少なくとも2人の女性に口止め料を支払い、選挙資金法に違反した事件について捜査してきた。ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ(Stormy Daniels)さんと、米男性誌「プレイボーイ」元モデルのカレン・マクドゥーガル(Karen McDougal)さんは、大統領選出馬前のトランプ氏と不倫関係にあったと主張した。

 現在禁錮3年の刑に服しているコーエン受刑者は、長年にわたりトランプ氏の顧問弁護士を務めた後に造反したため、トランプ氏にとって危険な証人となる可能性がある。

 コーエン受刑者は選挙資金法違反とされたダニエルズさんへの口止め料の支払いについて、トランプ氏の命令で実施し、トランプ氏本人が金を出したと証言した。トランプ氏の行為は犯罪に該当する可能性がある。

■トランプ氏一族の複合企業

 コーエン受刑者は2月の議会証言で、トランプ氏とトランプ氏一族が経営する複合企業トランプ・オーガニゼーション(Trump Organization)が財務上の不正を行った問題を提起した。

 コーエン受刑者によると、トランプ氏は銀行や保険会社に開示する財務情報を改ざんしたとされ、これについても連邦捜査官が調査している。

 この件について注目を集めているのは、40年にわたってトランプ・オーガニゼーションの経理を担当してきたアレン・ワイセルバーグ(Allen Weisselberg)氏だ。ワイセルバーグ氏はトランプ氏の秘密について、他の誰よりもよく知っているとみられている。

■慈善団体「ドナルド・J・トランプ財団」

 かつてはトランプ・オーガニゼーションの一部門だったトランプ財団(Donald J. Trump Foundation)も、ニューヨーク州司法長官が提起した訴訟の対象となっている。

 トランプ財団では、トランプ氏の政治・ビジネス面での利益に資するための「衝撃的な違法行為」が横行していたとして同州司法長官から批判され、昨年12月、解散に同意した。

 同州司法長官はトランプ氏に加え、財団の理事を務めていた長男ドナルド・トランプ・ジュニア(Donald Trump Jr)氏と次男エリック(Eric Trump)氏、長女イヴァンカ(Ivanka Trump)氏を提訴。280万ドル(約3億円)の返還などを求めている。

■所得税申告書

 トランプ氏は個人の所得税申告書の開示を繰り返し拒んでおり、連邦議会とニューヨーク州ではこれらを入手するための法的試みが行われている。

■大統領就任式

 ニューヨーク州の検察当局は、2017年の大統領就任式の巨額の資金についても、外国人からの献金が含まれていないかどうかを含めて捜査を進めている。

■連邦議会

 下院で民主党が主導する委員会は、トランプ氏の司法妨害、職権乱用、財務、選挙運動資金などに関する疑惑について調査を進めている。

 米民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は24日、6委員会で進められているさまざまな調査について、正式な弾劾調査の下でまとめられると明らかにした。

 2016年米大統領選へのロシア介入疑惑についてはロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官が、現職大統領に対する起訴を提言しないと結論付けている。

■報酬条項違反

 トランプ氏は大統領の地位を利用して私腹を肥やし、合衆国憲法の「報酬条項」に違反した疑惑をめぐり、複数の訴訟を提起されている。報酬条項とは、大統領などの公職に就く人物が、外国政府との取引から利益を得ることを禁じるもの。

 例えば、米国で来年開催される先進7か国(G7)首脳会議(サミット)の会場として、トランプ氏が自ら所有するフロリダ州のゴルフリゾートを提案したことは、報酬条項違反に該当するとして非難されている。

 メリーランド州とワシントン州の司法長官も、トランプ氏がワシントンのホテルを所有し続けていることをめぐって訴訟を提起した。このホテルはロビイストや会社役員、外国政府の関係者らが頻繁に利用している。この訴訟は先月、控訴審で却下されたが、議会民主党は別の報酬条項絡みの訴訟を提起しており、こちらは引き続き係争中となっている。(c)AFP