【10月13日 AFP】デンマーク領グリーンランド(Greenland)のクルスク(Kulusuk)では夏の間、パステルカラーの木の家や丘のあちこちにつながれたそり犬たちが、氷ができ狩りが始まる季節を待っている。

 グリーンランドの人々は冬になると、犬ぞりでアザラシやクジラ、ホッキョクグマを狩りに行く。気温は氷点下35度まで下がることもある。

 だが、グリーンランドの地表の85%を覆う氷が解け、冬の見通しが立たなくなるなど、気候変動はグリーンランドで親しまれてきた伝統の犬ぞり猟に影を落としている。

「氷は変わりつつある」とクルスクで暮らすモーゼス・バジャレ(Moses Bajare)さん(59)は語る。

 冬に海氷が凍ると、バジャレさんは12匹の犬に木製のそりを引かせ、海氷の端まで進む。そこからカヤックに乗り、ライフルでアザラシを狩る。

 バジャレさんは35年前からそり犬を飼っている。その間、海氷の状態は予測がつきづらくなってきているという。そりで滑れるほど氷が厚くなる時期は遅れ、薄くなる時期は早まっているという。そりを安全に引ける場所も、頻繁に変わっている。

 北極圏は、他の地域の2倍の速さで温暖化が進んでいる。バジャレさんの懸念は、クルクスに住む10人ほどのマッシャー(犬ぞり使い)だけが感じているものではない。グリーンランドの79%の人々が、地元の海氷の上を移動するのは、ここ数年でより危険になっていると考えている。

 コペンハーゲンとグリーンランドの大学が実施したグリーンランドの展望に関する調査では、約67%の人が気候変動は犬ぞりに害を及ぼすと答えている。(c)AFP/Tom LITTLE