【9月28日 東方新報】中国の若者の間で、漢民族の伝統衣装「漢服」を着ることがブームになっている。結婚式や伝統行事で着たり、無料アプリ「微信(ウィーチャット、WeChat)」を通じた愛好会が休日に観光地で撮影会をしたりと、じわじわと広がっている。北京の故宮(紫禁城、Forbidden City)などの人気エリアでは、仙女風に漢服で着飾った女性たちがポーズを取って撮影する光景も見られる。

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 日本に留学中の中国の若者に聞くと、「日本では成人の日や卒業式に和服を着ることは当たり前だが、中国では漢服を着たことがない人が大多数」と話す。その漢服を着る動きが始まったのは2000年代の前半。国内総生産(GDP)が毎年10%台だった高度経済成長時代、長期の海外生活から帰国した若者が中心だった。外国文化に接し、成長する中国の独自文化を取り戻したいと思うようになり、今では幅広い若者が漢服を楽しむようになっている。

 漢服は、漢代、唐代、宋代、明代のデザインを主とし、「上衣下裳(襟のある上着とスカート状の下衣)」や「深衣(丈が長く、裾が広がった、ゆったりとした衣服)」「襦裙(短い上着とスカート)」などがある。コスプレ感覚で、リュックやスニーカーを合わせる人もいる。当初はネットで購入したり特別に仕立てたりしていたが、最近は取り扱う店も増えてきた。

 愛好家の韓傑(Han Jie)さん(19)は「Tシャツを着るのと同じ感覚です」と話す。半年前から漢服にハマり、8着の漢服を購入。最も高いものは3000元(約4万5000円)したという。「仕事の時以外は漢服ばかり着ています」

 ただ、広く社会に認知されているわけでもない。韓傑さんの仲間・張揚(Zhang Yang)さんは漢服を着て街を歩いていると、「それは韓国の服?日本?」と尋ねられたりするという。特に年配層は無関心か冷ややかで「外見ばかりで中身が伴わない」という批判もある。

 韓傑さんは反論する。「漢服文化は風変わりな懐古趣味ではない。漢字が甲骨文字から現在の形になったように、漢服も変化している。新しい文化の創造だ」

 ある識者は「かつて中国の若者の間で、日本や韓国の新しい文化を模倣する『哈日族(訳:日本マニア、Harizu)』や『哈韓族(韓国マニア、Hahanzu)』が流行したが、最近の漢服を着る動きは、中国の若者の間で民族的自覚が高まり、母国の文化に自信を持ってきた表れと言えるだろう」と分析している。(c)東方新報/AFPBB News