Q:2100年に何が起こるのか。

A:2100年になると、氷融解を止める手段は無くなる。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」に定める気温上昇目標を実現できたとしても、よくて海面上昇が減速するだけだ。実現できなければ、今世紀末まで海面上昇は加速し続けるだろう。

 西南極の氷床の最も脆弱な部分は海面下にあるため、底面から海水が染み込み、浸食される。これらの氷床が解けると、3.5メートル相当の海面上昇につながる。

Q:氷床の消失にはどれくらいの時間がかかるか。

A:私たちは氷床消失の速度を過小評価している。つまり、西南極の氷床のすべてが失われるには数百年かかるが、その動きを止めることはできないということだ。

Q:どれくらい憂慮すべきなのか。

A:海面上昇で自らの生活の心配をする必要はない。しかし、米ニューヨークが海面下5メートルに位置するようになり、堤防や土手で囲まれれば、住みたいと思う人がいるかは疑問だ。

 香港、米ニューオーリンズ(New Orleans)、ニューヨーク、独ハンブルク(Hamburg)、印コルカタ、中国・上海――これらの都市は、私たちが炭素の排出をやめなければ、海面上昇で失われるだろう。

Q:なぜ南極の氷の消失はグリーンランドに比べ把握が困難なのか。

A:グリーンランドの氷床と異なり、南極の氷の消失は融解によるものではなく、氷山が海に落ちることが原因となっている。この現象を正確に把握することは難しい。そもそも、この過程をモデル化し観測すること自体が不可能だ。

 西南極の衛星画像が撮影されるようになったのは1992年以降だ。10年前から西南極の氷の消失は観測されているが、20年以内のデータしか入手できない。これでは長期傾向を検出するのに十分とは言えない。

 氷床は長い時間をかけて変化するため、観測データを読み違える可能性も非常に高い。

 南極は強い海流と気流によって、その他の地域から切り離されている。これも予測を難しくしている。(c)AFP/Marlowe HOOD