西南極の氷融解と世界の沿岸地域への影響、専門家が解説
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【9月24日 AFP】世界の沿岸地域とそこに住む何億もの人の運命は、西南極(West Antarctica)の氷の融解が今後どうなるかにかかっている。西南極の氷の融解が今のままの速度で進めば、世界の海面は少なくとも3メートル上昇すると考えられているためだ。
複数の科学的根拠によると、これは「もし」という問題ではなく「いつ」という問題になっている。
国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は近日中に、「海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書」を公開する予定だ。それに先立ち、南極研究の第一人者である独ポツダム気候影響研究所(PIK)のアンダース・リーバーマン(Anders Levermann)氏がAFPの取材に対し、気候変動が世界で最も寒い地域に及ぼす影響について説明した。
Q:地球温暖化はグリーンランドと南極に同じような影響を与えるか。
A:そうはならない。南極の氷の損失の99パーセントは海に氷が落ちることにより発生している。寒すぎるため、表面の氷の融解は実質的に起こらない。
一方、グリーンランドの氷の損失の半分は、融解した氷が海に流れることによって発生する。
南極またはグリーンランドの氷が海に押し出され、棚氷になると、海面と接する状態になる。このため水温が0.1度上昇しただけで、氷床に著しい不均衡が生まれる。
グリーンランドの氷床は南極のものに比べて非常に小規模だ。グリーンランドの氷床の融解は海面を7メートル上昇させるが、南極の場合は55メートルに達する。だが、グリーンランドでは南極を上回る量の氷が融解している。南極の方が地理的に障壁となるものが少ないとしても、ずっと寒いためだ。
Q:南極について10年前に判明していなかった事実はあるか。
A:10年前の南極モデルでは、今世紀中の氷の消失はそれほど甚大ではないとされていた。実際、南極の氷が増える可能性についての議論さえ存在した。
今日、すべての氷床モデルにおいて、氷の損失速度は著しいと考えられている。南極の氷床は2005年以来毎年1500億トン海に押し出されており、このほぼすべてが西南極で起きている。氷の消失はグリーンランド、南極共に加速している。
もはや氷が消失することについて疑いはない。複数の研究によると、西南極の転換点は既に過ぎている。西南極は不安定になっており、最も脆弱(ぜいじゃく)な氷はすべて海に放出される見込みだ。
Q:南極は2100年までの海面上昇にどれくらい寄与するのか。
A:2014年に私が同僚らと行った研究では、2100年までに南極の氷融解により海面が50センチ上昇する可能性があると推定している。これは大きな数字だ。また、IPCCは16センチまで上昇すると最新の評価で見積もっている。
2016年に英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究では、南極の氷融解により海面が1メートルまで上昇すると示された。だが、この研究は多くの批判を受けたため、研究結果の見直しが行われる可能性がある。