【9月14日 AFP】中国の民主化運動を当局が武力弾圧した天安門(Tiananmen)事件で、人民解放軍(PLA)の戦車の前にたった一人で立ちはだかり、「戦車男(Tank Man)」と呼ばれた男性の決定的瞬間を捉えた写真家が、インドネシアで亡くなったことが分かった。64歳だった。米当局が明らかにした。

 米当局によると、米テキサス出身のチャーリー・コール(Charlie Cole)氏は、長年住んでいたインドネシア・バリ(Bali)島で死亡した。当局はAFPに対し、「訃報に接し、遺族に深い哀悼の意を表する」と述べた。

 コール氏は、中国・北京の中心部で、人民解放軍によって民主化運動に参加していた多数の市民が殺害された翌日、白いシャツを着て買い物袋を両手に提げた男性が大股で通りを歩く様子を撮影し、1990年に「世界報道写真(World Press Photo)」コンテストで受賞した。

 現在も身元が明らかになっていない写真の男性は、通りのずっと先まで並んだ戦車と装甲車の列の前で立ち止まった後、威嚇射撃が鳴り響く中、戦車に登り、乗っていた兵士を説得しようとした。「戦車男」と呼ばれるこの男性のショットは、20世紀を代表する決定的な写真になったが、中国国内では検閲や大々的な取り締まりの影響でいまだに広く知られてはいない。

 男性はその後、おそらく中国の治安当局によって行方が分からなくなり、より一層、謎に包まれた存在になっている。(c)AFP