【9月11日 AFP】欧州評議会(Council of Europe)は10日、フィンランドのインターネット環境には人種差別や特定の人々を標的にした暴言が「当たり前のように」存在し、それらが政治的な言論の場で増加傾向にあると警告した。

 フィンランドは幸福度、男女平等、生活の質といった面で国際ランキングのトップに立つことが多い。だが、西欧諸国の中では外国生まれの居住者の割合が全人口の6.6%と最も少なく、反移民感情もはびこっている。

 過去2回の総選挙では、強硬な反移民政策を基盤にした公約を掲げた極右フィン人党(Finns Party)が、国内第2の政党に躍進した。

 欧州評議会の「人種主義と不寛容に反対する欧州委員会(ECRI)」が発表した報告書は、「人種差別や不寛容なヘイトスピーチがエスカレートしている。主な標的となっているのは、難民申請者とイスラム教徒だ」と指摘した。

 さらに報告書の著者は、オンライン上には「反移民的な言辞や、アフリカ系住民、LGBT(性的少数者)、ユダヤ教徒のコミュニティーを標的にした人種差別的、排外主義的な表現、ロマ人に関する暴言が当たり前のように投稿されている」とも指摘した。

 昨年、欧州基本権庁(European Union Agency for Fundamental Rights)は、フィンランド在住のアフリカ系住民が、調査対象となった他のEU12か国に比べて最も頻繁に人種に基づいた差別や暴力の標的になっていることを明らかにした。

 フィンランド当局は2017年に1165件の憎悪犯罪を記録した。しかしECRIの報告書は、収集されたデータが十分でないため、毎年のデータ比較も正確にできないと批判している。それでも市民団体の調査によると2015年以降、憎悪犯罪は増加傾向にある。

 フィンランドでは警察が人種や民族に基づいてプロファイリング(犯人像推定)を行うことは2015年に非合法化されたが、ECRIによると現在も警察のそうした活動は珍しくない。また警察官の人種構成は、フィンランド人口を構成するさまざまな人種を反映しておらず多様性を欠くとも、ECRIは批判している。(c)AFP