【9月5日 AFP】英国の政治はここ数日、大きな動きを見せている――ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相の与党・保守党が議会で過半数を失い、総選挙の前倒しも否決され、ジョンソン氏の英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)計画はずたずたにされた。

 今後数週間に起こり得るシナリオを説明する。

■総選挙の前倒し

 総選挙の前倒しは、英下院で4日に否決された。それでもまだ最も起こり得るシナリオだ。

 英国法に基づくと次の総選挙は2022年となっている。もし政府が前倒しで総選挙を実施したければ議会の3分の2の賛成が必要となる。

 最大野党労働党は、まず合意なき離脱を阻止する法案が上院で承認されるべきだとして、ジョンソン氏が提出した総選挙実施を求める動議の採決を棄権した。

 ジョンソン氏に反対する勢力からは、10月15日に総選挙を実施するという同氏の考えはにわかには信じがたく、10月31日の離脱後まで遅らせようとするのではないかとの声も上がっている。

 また、世論調査で支持が低迷している労働党にとっても、この時期の総選挙は都合が悪い。

 労働党が反対を続けた場合、ジョンソン氏は政権に対する不信任決議案の提出を求めたり、総選挙のための新たな法律を導入したりといった他の選択肢も検討する可能性がある。両案とも過半数の支持で実施できる。

■「合意なき離脱」

 EUとの合意の有無にかかわらず、現状の離脱期限は10月31日と決められている。

 2016年6月に国民投票でEU離脱が決まってから3年以上が経過したが、ジョンソン氏はこれ以上、離脱の期限を延長するつもりはないと主張している。

 ジョンソン氏はEUとの合意を求めているが、「合理なき離脱」に対する準備も強化している。これについて専門家らは、ジョンソン氏は合意なき離脱シナリオを押し通そうとする可能性があると指摘している。

 ジョンソン氏は英議会を、離脱期限の約2週間前の10月13日まで閉会すると発表し、猛反発を受けた。

 この他に、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)にジョンソン氏のブレグジット計画に反対する法律に対して裁可を与えないよう依頼したり、ブレグジット期限延長を拒否するEU加盟国を見つけ出そうとする可能性が考えられる。