【8月28日 AFP】「クリスパー(CRISPR)」と呼ばれる強力な遺伝子編集技術は近年、マウス、植物、人間などで飛躍的な進展をもたらしているが、この技術を爬虫(はちゅう)類で機能させることは、生殖様式の決定的な違いから非常に難しいとされてきた。

 しかし、米ジョージア大学(University of Georgia)の研究チームは今回、この困難を克服して、アルビノ(先天性色素欠乏症)のアノールトカゲを作製することに成功した。この成果について研究チームは、色素欠乏症における視力の問題を理解する助けになるとの見方を示している。

 27日の医学誌「セル・プレス(Cell Press)」に掲載された論文の共同執筆者であるダグ・メンケ(Doug Menke)氏は、「トカゲのゲノム(全遺伝情報)を改変して遺伝子を操作する方法をしばらく模索してきたが、われわれは主要モデル系における遺伝子編集のやり方に固執してしまっていた」と話す。

 主要モデル系とは、マウスやミバエ、ゼブラフィッシュなどのように実験室で広く研究対象とされる生物のことを指す。

 クリスパー遺伝子編集技術は通常、受精したばかりの卵や接合子に対して実行されるが、産卵する動物にこれを適用するのは難しい。精子が雌の卵管の中に長期間貯蔵されるため、受精のタイミングを把握することが困難であることもその理由の一つだ。

 だが、卵巣を覆う膜が透明なため、次にどの卵が受精するかを確認できることに気付いたメンケ氏と研究チームは、受精が起こる直前の卵にクリスパー試薬を注入。その結果、遺伝子編集は正しく機能したばかりか、驚いたことに、研究チームが予測していた母系のDNAだけではなくて、母系と父系の両方のDNAに作用した。

 だが、研究チームはなぜアノールトカゲをアルビノにすることを選んだのか。

 これについてメンケ氏はまず、アルビニズムと関係のあるチロシナーゼ遺伝子の不活性化がトカゲにとって致命的ではないことを挙げた。