【8月15日 AFP】カナダ政府の倫理規定違反を監視する連邦議会の倫理委員会は14日、ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相が建設大手の贈賄事件をめぐって司法介入したとされる疑惑について、当時の司法長官への圧力はあったと認定する報告書を発表した。

 カナダは10月に総選挙を控えているが、今年に入って発覚したこのスキャンダルを受けてトルドー氏の「期待の星」のイメージは薄れ、閣僚2人と高官2人が失職。与党・自由党の支持率は急落後、やや持ち直したものの、直近の世論調査では野党・保守党とほぼ拮抗(きっこう)している。

 連邦倫理委のマリオ・ディオン(Mario Dion)氏は、トルドー氏と側近が、建設大手SNCラバラン(SNC-Lavalin)の贈賄事件で刑事訴追を避けるため、規定に違反して「司法長官の判断に影響力を行使」しようとしたと結論付けたことを明らかにした。

 トルドー氏は利益相反行為に関するカナダの法律に違反したとみなされ、最大500カナダ・ドル(約4万円)の罰金を支払うこととなる。少額だが、総選挙が2か月後に迫る中、政治的な代償ははるかに高くつく恐れがある。

 SNCラバランは、2001~2011年にリビアのムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)政権下で政府の事業を受注するため現地当局者に4700万カナダ・ドル(約37億円)の賄賂を贈ったほか、リビア政府から1億3000万カナダ・ドル(約104億円)をだまし取ったとして、2015年に訴追された。

 トルドー氏はこれまで自身と側近の司法介入疑惑を断固否定してきたが、14日の会見では遠回しに誤ちを認め、「(倫理委員会の)結論には一部、同意できない点があるが、私は報告を全面的に受け入れ、起きたこと全ての責任を負う」と述べた。その上で「ただし、カナダ人の雇用を守ったことへの謝罪はできない。なぜなら、それは私に対するカナダ国民の期待の一部だからだ」とも語った。

 トルドー氏が倫理法規違反と認定されるのは2回目。2017年には、大物実業家で宗教指導者のアーガー・ハーン(Aga Khan)氏の所有するバハマ諸島の島で家族と休暇を過ごした際、休暇手当を受け取ったのが違反とされた。(c)AFP/Michel COMTE