【8月15日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は、2020年に予定されている次期火星探査に向けた準備のため、アイスランドの溶岩原を火星に見立てて新型無人探査車の野外試験を実施した。

 NASAが派遣した15人の科学者と技術者は先月、首都レイキャビクから100キロ離れた現地に入り、3週間にわたり試作車開発を行った。

 火星の「代役」には、黒玄武岩の砂、吹きさらしの砂丘、岩だらけの高台などの特徴を持つ、アイスランドで2番目に大きいラングヨークトル(Langjokull)氷河のふもとに広がる溶岩原が選ばれた。この場所が選ばれたのは、砂や岩が氷河から近くの川まで運ばれるにつれて、化学組成や物理的性質がどのように変化するかを調査するためだ。

 火星は平均気温氷点下63度の荒涼とした極寒の砂漠になる前は、亜北極の島アイスランドと多くの共通した特徴を持っていたと、科学者らは考えている。

 カナダの宇宙技術企業ミッション・コントロール・スペース・サービシーズ(Mission Control Space Services)の宇宙教育部長を務めるアダム・デロリエ(Adam Deslauriers)氏は「ここは、火星探査や探査車の操縦方法を学ぶのに非常に適した場所だ」と述べた。

 ミッション・コントロール社は、SAND-E(砕岩質環境のための半自律ナビゲーション)プロジェクトの一環で、NASAから火星探査車の試作車試験を委託されている。同社は来年夏、2020年7月17日~8月5日に予定されている次の火星探査車ミッション打ち上げまでにもう一度アイスランドで試験を行う予定だ。

 試作車は車体パネルが白色で車台がオレンジ色の小型電気自動車だ。2台のモーターを動力源として走行する四輪駆動車で、電源として自動車用の小型バッテリーを12個内蔵している。

 試作車は搭載するセンサーとカメラを用いて周囲の環境からデータを収集して分類し、結果を技術者チームのトレーラーに送信する。技術者は受け取ったデータを一括して科学者チームがいるテントに転送する。火星から地球にデータを送信する方法を模擬実験するのが目的だ。

 アイスランドはこれまでも、NASAの探査計画の訓練に利用されてきた。

 NASAの有人月探査ミッション「アポロ(Apollo)計画」では1960年代中頃、宇宙飛行士32人がアスキャ(Askja)溶岩原や北部クラプラ(Krafla)火山の噴火口近くなどで地質学に関する訓練を受けた。(c)AFP/Jeremie RICHARD