【8月18日 東方新報】中国では、旧暦の7月7日は七夕以外に「情人節(QingRenJie、恋人の日)」と呼ばれ、カップルにとって最も大切な一日となってきている。今年は8月7日が七夕で、高額なプレゼントを買ったり、婚姻届を出したりと、「七夕狂騒曲」はさらに高まりを見せた。

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 若者の間で消費欲や記念日を楽しむ感覚が高まっているのが要因だが、「米国と中国の対立」も遠因になっているようだ。

 中国では、七夕を祝う習慣がすたれていた時期もあったが、西洋のバレンタインデー文化が中国に伝わり、これに触発される形で「中国版バレンタインデー」として復活してきた。日本ではバレンタインデーは女性が男性に告白してプレゼントを渡す日だが、中国では男女どちらもプレゼントを贈り、どちらかというと男性が女性にプレゼントすることが多い。七夕も同様で、彼氏が彼女に「おもてなし」をする日となっている。

 インターネット上の調査では、8月7日の1週間前からネットの検索ワードで「七夕のプレゼント」が最も多くなった。口紅や香水、ネックレス、ダイヤ、女性向けの時計、演劇チケットなどが通常の2倍前後の売れ行きとなった。七夕が情人節として広まった当初は、プレゼントといえばバラの花やチョコレート程度だったが、今では男性が「愛の証し」として大枚をはたいて女性にプレゼントするようになった。そのプレゼントも高級レストランで食事をしながら贈るなど、「愛の代償」は高くつくようになっている。

 また、正確なデータではないが、8月7日を選んで結婚式を挙げたカップルが20万組に上ったといわれる。2018年に婚姻届を出したカップルは1010万組で、単純に日割りすると1日約2万7000組。いかに「七夕結婚」が多いかが分かる。

 2月14日と旧暦の7月7日で「中国は2回バレンタインデーがある」ともいわれるが、最近は七夕への関心が高まっている。一つには、「中華民族の復興」をスローガンとする政府が国民の意識を一体化させるため、伝統の復活に力を入れていることがある。七夕を祝うことは、カップルの愛を確かめるとともに「愛国者」である意味も加わるわけだ。

 中国は今、米国との終わりのないような経済対立が続いている。習近平(Xi Jinping)国家主席は5月20日、「今こそ新たな長征に出なければならない」と国民に呼びかけた。1934年、国民党と戦っていた毛沢東(Mao Zedong)氏率いる共産党が壮絶な行軍をした長征になぞらえ、米国との長期の貿易戦争に耐えるよう訴えた。

 そんな中、西洋の習慣そのものであるバレンタインデーで盛り上がるよりは、中国伝統の七夕を祝う形で愛を確認しあい、婚姻届を出すことが「愛国者」の証しとなる。ちなみに、中国ではクリスマスを祝う習慣も年々広まってきたが、「キリスト教の普及」「西洋文化の浸透」につながるという警戒感も高まり、街頭にクリスマスツリーを掲げたり、クリスマス商品を街頭販売したりすることを規制する地域も増えている。

「七夕狂騒曲」は、基本的には中国市民の生活が豊かになり消費能力が高まったことの表れだが、織り姫が縦糸と横糸で機を織るように、政治情勢も折り重なっている。(c)東方新報/AFPBB News