【8月13日 AFP】米ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権は12日、「絶滅の危機に瀕(ひん)する種の保存に関する法律(Endangered Species Act)」(種の保存法)に基づく主要な規制を緩和することを最終決定した。同法は米国民の大多数の支持を得るとともに、タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)やハクトウワシ、ハイイログマ(グリズリー)の個体数を回復させたとの評価を受けてきた。

「絶滅危惧種(endangered species)」(同法では、分布域のすべて、または重要な一部で絶滅の危険がある種を指す)と同等の保護を、「絶滅の恐れのある種(threatened species)」(近い将来に絶滅危惧種に入る可能性が高い動植物種)に対して自動的に行うことを定めていた規則が撤廃されるほか、野生生物の保護指定について判断する際、経済への影響を一切考慮しないよう定めていた文言が削除される。

 今回の変更は「トランプ政権による種の保存法施行規則の改善」と題する声明で発表された。デービッド・バーンハート(David Bernhardt)内務長官は声明で「種の保存法を支える最善の方法は、最も希少な種を回復させるという究極の目標を達成する上での効果を確実に持続させるため、手を尽くすことだ」と表明した。

 さらに同長官は「法律が効果的に施行されることで、最大の効果が上がる場所、すなわち実地での保全活動に振り向ける資源を増やすことができる」とした。

 同長官には、石油・ガス業界のロビー活動に従事していた経歴がある。

 野生生物保護に携わる各団体は失望を見せ、今回の規制緩和は漸進的な破壊につながると表明。一つ一つの事業計画で保護指定された種の生息地に対する小さな影響が認められ、それが積み重なって破壊が進んでいくと指摘した。

 非営利団体アースジャスティス(Earthjustice)のドリュー・カプート(Drew Caputo)氏は「これは絶滅危惧種や絶滅の恐れのある種の保護を骨抜きにする取り組みであり、トランプ政権の多くの行動に共通する2つの特徴がある。まず、産業界への贈り物であること。それから、違法であることだ」と表明。今後、同政権に対して訴訟が起こるとの見通しを示した。

 種の保存法は1973年、共和党のリチャード・ニクソン(Richard Nixon)大統領の署名で成立。タイリクオオカミなどの種の個体数は20世紀初めに大きく減少していたが、同法によって回復し、現在は狩猟が合法化されるまでになっている。

 また、米国の象徴とされるハクトウワシのつがいの数は1963年の417組から1万組まで回復している。

 科学雑誌コンサベーション・レターズ(Conservation Letters)が2018年に掲載した論文によると、種の保存法を支持する米国民は5人中4人、同法に反対する国民は10人中1人で、同法に対する支持は過去20年間安定している。(c)AFP