■誘拐やゆすりの危険も

 ザ・ビーストのヘッドライトと線路から響く金属音が、パレンケの湿った夜明けの空気を切り裂く。移民たちは列車から降り、線路沿いを歩く。

 パレンケの鉄道駅付近にあるカサ・デル・カミナンテ(Casa del Caminante)移民シェルターの所長である修道女のマリア・テージョ(Maria Tello)さんは「移民の多くは警察や犯罪者に強奪されるのを避けるため、ここまで来るのにジャングルや山の奥深くを通る方法を選択する」と語った。

 メキシコ当局は7月下旬、グアテマラとの国境に位置するチアパス(Chiapas)州で誘拐されたホンジュラス人一家を救助した。また、あるホンジュラス人はグアテマラの治安当局に3回もお金を渡さなければならなかったと話す。そうしなければバスから降ろすと言われたという。

 テージョさんは、移民らがどのルートを通ってくるのか正確には知らないが、「知っていたとしても彼らを危険にさらすことになるから明かさない」と述べた。

 メキシコ政府は、移民に対する新たな措置は品位と人権に配慮し、尊厳をもって正式な書類を保有していない旅行者を扱うためのものだと主張する。だが、テージョさんは「(移民から)持ち物全部を取り上げており、適切な扱いをしているとは思えない」と冷笑する。

 コントレラスさんは他のホンジュラス人と一緒になって、米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領とメキシコのアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領との間に結ばれた合意を激しく非難した。合意では、米国による対メキシコ関税の発動を回避するため、メキシコ国境の国家警備隊員を増員することになっている。

「両大統領がやっていることは、スズメバチの巣をつつくようなものだ。被害が発生し、死者が増えるだろう」とコントレラスさんは述べた。(c)AFP/Jean Luis ARCE