【8月3日 AFP】シンガポールで3日、新たな野党「シンガポール前進党(Progress Singapore PartyPSP)」が結成された。総選挙が近々実施されるとの臆測が高まる中、リー・シェンロン(Lee Hsien Loong)首相の政権に挑む新たな政党が誕生した。

 新党を率いるのは、かつては筋金入りの与党・人民行動党(PAP)議員だった医師のタン・チェンボック(Tan Cheng Bock)氏(79)。タン氏は、2011年の大統領選に出馬したが主流派のトニー・タン・ケン・ヤム(Tony Tan Keng Yam)候補に僅差で破れた経験を持つ。新党は、兄である首相との不和が伝えられるリー・シェンヤン(Lee Hsien Yang)氏(62)からも支持を取り付けている。 

 シンガポール建国の祖として約30年にわたって首相の座にあり、今なお国民から敬愛されているリー・クアンユー(Lee Kuan Yew)氏が2015年に死去した後、名門一族にお家騒動が勃発。クアンユー氏の遺産をめぐって兄弟の間で苦い確執が続いており、シェンロン首相の弟のシェンヤン氏による新野党PSPへの支持表明は、リー兄弟の不和を物語る最新の証しと受け止められている。

 故クアンユー氏が立ち上げた人民行動党は、与党として半世紀以上にわたって政権を運営。シンガポールはアジア有数の経済大国へと成長を遂げた。だがその一方で、政府は人権や言論の自由を抑圧しているとの批判にも直面してきた。

 その人民行動党に選挙で一矢報いることを目指す少数野党に新党PSPも加わることになるが、選挙区投票による議会定数89のうち、野党の現獲得議席はわずか6議席で、与党に大きな打撃を与える反対勢力には成り得ないと目されている。

 総選挙は2021年までに実施予定とされているが、より早い時期に実施されるとの予想が大方の見方だ。(c)AFP