■「がんを栄養不足に」

 研究チームは、メチオニン制限が代謝に望ましい効果をもたらすことを確認するために、健康なマウスを用いた実験を最初に実施した後、大腸がんや軟部組織の肉腫を抱えるマウスを用いた実験に移行した。

 実験の結果、単独では大腸がんに全く効果がなかった低用量の化学療法が、メチオニン制限と組み合わせると「腫瘍増殖の著しい阻害」につながることが明らかになった。同様に、軟部肉腫のケースで放射線治療をメチオニン制限と組み合わせると腫瘍の増殖が抑制された。

「非常に基本的なレベルで、がん細胞を特定の栄養素の欠乏状態に陥らせる」と、ロカセール准教授は説明した。

 研究チームは今回の研究の拡張として、健康な被験者6人にメチオニン制限食を摂取させる実験を実施した。その結果、人の代謝への作用がマウスで確認される作用と類似するとみられることを発見した。これは、食事が人体の特定の腫瘍に対して同様の効果を持つ可能性があることを示唆している。だが、確定的な結論を導き出すのは時期尚早だと、ロカセール准教授は注意を促した。

 2018年に発表された研究では、化学療法薬剤の1種を糖質が少なくタンパク質と脂質が多い食事と組み合わせることで効果が高くなることが示されていた。その他のがんも低糖質食との組み合わせで治療効果が向上するとみられる。

「これは現時点でまさしく本当に心躍る分野だ。食事が人の健康に非常に大きな影響を与えることが確認されつつある」と、ロカセール准教授は話した。(c)AFP/Sara HUSSEIN