【12月8日 AFP】がんの転移を阻止する方法を、マウス実験で発見した可能性があるとの研究論文が7日、発表された。論文を発表したスペインの研究チームによると、がんの転移は脂肪の摂取に関連している可能性があるという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された論文によると、スペイン・バルセロナ生物医学研究所(IRB)などの研究チームは、がんを臓器から臓器へと拡散させるタイプの腫瘍(しゅよう)細胞を発見したという。転移として知られるこのプロセスは、がんの致死率を大きく高める原因となる。

 また研究チームは、この腫瘍細胞が「CD36」と呼ばれる受容体を持つことを明らかにした。CD36受容体については、脂肪の摂取を調節することが知られている。

 人の腫瘍を移植したマウスを用いた実験では、CD36受容体を阻害する抗体を投与することで、転移が「有意に減少した」と研究チームは述べている。この方法では、人の口腔(こうくう)がん、皮膚がん、乳がんなどに効果がみられた。

 研究チームは、一部のマウスで転移細胞が完全に消滅したことを明らかにしながら、「このようなことは、日常的に起こるものではない」と力説した。

 さらに、CD36受容体が豊富な細胞を持つマウスに高脂肪の餌を与える追加実験では、遺伝子的に近いマウスに普通の餌を与えた場合に比べて、転移の発症数が増え、転移の規模も大きくなったと、研究チームは説明している。

 転移は、がん細胞が腫瘍から離れ、血液やリンパ系を通じて移動し、体の別の部位に新たなコロニーを形成することで発生する。研究チームによると、がん死の約90%は、転移が原因で起きるという。

 がん細胞のすべてが転移をするわけではない。転移を起こすがん細胞を特定して殺傷できるようにすることが、がん研究の最優先事項の一つになっている。

 今回の最新の研究結果により、CD36は抗がん剤の有力な標的候補となると研究チームは指摘した。