シベリア森林火災、すすと灰が北極圏の氷と永久凍土の融解を加速
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【7月31日 AFP】ロシア・シベリア(Siberia)の広範な地域では、大規模森林火災が定期的に発生しているが、今年の火災は異例の規模となっており、環境への長期的影響が懸念されている。
森林火災による延焼面積は数百万ヘクタールに及び、周辺の都市全体が黒煙と有害煙霧に覆われる中、環境問題専門家らはこの災害が北極圏の氷融解を加速させる恐れがあると警告している。
当局によると、29日の時点での延焼面積は320万ヘクタール以上に及んでおり、主にシベリアのサハ(Sakha)共和国、クラスノヤルスク(Krasnoyarsk)、イルクーツク(Irkutsk)など広大な地域が炎に包まれているという。
ロシア連邦森林局は、気温が30度を超える中で発生したドライサンダーストーム(雷だけで雨が降らない嵐)が引き金となり火災が発生し、強風にあおられて拡大したと説明している。
鼻を突く臭いがする煙の影響は、小規模集落だけでなく西シベリア(Western Siberia)とアルタイ(Altai)地方の主要都市だけではなく、チェリャビンスク(Chelyabinsk)、エカテリンブルク(Yekaterinburg)などの都市があるウラル(Urals)地方にも及んでいる。また、この影響で航空機の運航にも乱れが生じた。
煙が北極圏にまで達している様子を捉えた米航空宇宙局(NASA)の衛星写真をインターネットに投稿した科学者もいる。
■環境への影響
シベリアの森林火災は地域住民の健康に影響を与えるだけではなく、地球温暖化を加速させる可能性もあると、専門家は警鐘を鳴らす。
国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)ロシア支部は「森林火災は国全体に影響を及ぼす生態学的災害と化している」と述べている。
グリーンピースによると、1200万ヘクタール近くが焼失した今年の森林火災で、膨大な量の二酸化炭素(CO2)が排出され、森林が持つ将来のCO2吸収能力が低下したという。
世界気象機関(WMO)はAFPの取材に「氷や雪の上にすすが落ちると黒くなり、表面の反射率が低下し、より多くの熱を閉じ込めるという問題も生じる」と説明した。
グリーンピースロシア支部の専門家、グリゴリー・ククシン(Grigory Kuksin)氏は、森林火災のすすと灰が北極圏の氷と永久凍土の融解を加速し、地球温暖化を促進するガスを放出させると指摘する。
ククシン氏は気候への影響は「極めて深刻だ」で、「大都市の排出量に匹敵する」と述べた。「森林火災が気候に与える影響が増えるほど、危険な火災が新たに発生する条件も増える」
■消火活動費用不足で事態悪化
森林火災を食い止める十分な資金をロシアが持っていないという事実が事態をさらに複雑にしている。
森林火災の大半は人里離れた土地や人が近付けない地域で発生しており、当局は推定される損害額が消火活動費用を上回る場合に限り鎮火を決断していると、専門家らは指摘している。
推定損害額が消火活動費用を下回る場合の当局の役割は、森林火災の監視に限定されるという。(c)AFP/Maria PANINA