【7月30日 AFP】アフガニスタン大統領選の選挙戦初日となった28日に首都カブールで、副大統領候補アムルッラー・サレー(Amrullah Saleh)氏の事務所が襲撃され、少なくとも20人が死亡した。これを受け、出馬している候補者らは29日、一斉に現職のアシュラフ・ガニ(Ashraf Ghani)大統領を非難した。

 サレー氏の事務所は自爆攻撃を受けた上、武装集団に襲撃され、少なくとも20人が死亡、50人が負傷した。死者の大半は民間人だった。攻撃の犯行声明はまだ出ていない。

 イスラム過激派勢力タリバン(Taliban)による旧政権の崩壊後、4度目となるアフガニスタン大統領選は9月28日に投票が行われるが、波乱に満ちたスタートを切ることとなった。

 大統領選の有力候補の一人で、ガニ政権で国家安全保障顧問を務めたハニフ・アトマル(Hanif Atmar)氏の広報担当者はAFPに対し、「政府は候補者たちの安全を気に掛けていない」と指摘。アトマル氏と他の12人の候補者らは、第一に安全面の懸念と、さらにガニ大統領が不正行為で優位に立とうとしているとみて、選挙運動の開始日を遅らせたとAFPに述べた。

 一方、内務省報道官は、治安部隊が選挙に向けて8か月間にわたり準備を行っていたと述べ、候補者らを守るために装甲車両を配備するなど「厳重な対策」を取っていると主張した。

 大統領選は今年に入りすでに2回延期されている。2014年の大統領選での大規模な不正疑惑もあり、有権者らは選挙制度をほとんど信頼していない。アトマル氏と他の12人の候補者らは、「不正のない」選挙の実現に向けて国際社会の支援がない限り、選挙をボイコットするとけん制してきた。

 一方、北大西洋条約機構(NATO)は29日、作戦遂行中だった米兵2人が死亡したと発表。今年に入ってからアフガニスタンで戦闘中に死亡した米兵は、合計12人となった。

 米政府はアフガニスタンからの米軍撤退を模索している。そうした中、サレー氏の事務所に対する襲撃は、同国の不安定な治安情勢と、タリバン以降の選挙戦のたびに起きてきた流血の惨事を改めて想起させた。

 米国とタリバンが和平交渉を進める中で重要な選挙を実施すべきかという疑問も残されており、大統領選がそもそも行われるのかどうかも危ぶまれている。(c)AFP/Thomas WATKINS