■暴力の外部委託

 ただ、こうした一連の事象を研究している人々は、明確なつながりを示す証拠はめったにないと話す。

 中国における地方政府とギャングの主従関係について研究するカナダ・トロント大学(University of Toronto)のリネット・オン(Lynette Ong)氏はAFPに対し、「政府組織は、もっともらしく否定するために暴力を外部に委託している」と述べた。

 オン氏によると、元朗駅での暴力沙汰は「犯罪組織の一部によるものだった可能性もあるし、単に腕力を振るいたかった人々によるものだった可能性もある」と指摘する。

 台湾を拠点とし、同地の三合会について研究する学者、J・マイケル・コール(J Michael Cole)氏は、犯罪組織が「中国共産党の代理人、または執行人として行動しているのではないかと長らく疑われている」と語る。

 また、台湾で最も熱烈な親中派政党が、台湾マフィア「竹連幇(Bamboo Union)」の元トップで、「白狼(White Wolf)」の異名で知られる張安楽(Chang An-lo)氏によって立党された点についても言及。張氏は、台湾での逮捕を避けるために数年の間、中国本土で暮らしていた。

 コール氏はさらに、中国政府と犯罪組織の間に、「中国共産党に政治的な利益をもたらすと同時に、三合会が富を築くことを可能にする共生関係」が存在していると述べた。

 英国が支配していた時代に香港警察の刑事情報科トップを務め、三合会を追っていたスティーブ・ビッカース(Steve Vickers)氏は、1997年の中国返還以降、当局の抑えが緩んだと指摘。

 その後リスクコンサルタント会社を立ち上げた同氏は、「三合会は常に問題だったが、少なくとも英国の行政下にあった間はしっかりと抑えられていた」と述べた一方、「中国への返還後、香港当局は三合会を同じレベルまで取り締まってはいない」と説明した。

 前出の成名氏は、元朗区での襲撃が「恐怖を吹き込み」、人々が今後デモに参加するのを思いとどまらせるために企図されたと指摘。だが「大きな反発を生み、裏目に出る可能性もある」と指摘した。(c)AFP/Jerome TAYLOR