【7月15日 AFP】14日に行われたテニス、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2019)の男子シングルス決勝で、ロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)との大会史に残る死闘を制したノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)が、これまでのキャリアで「精神的に最も苦しい試合だった」と話した。ジョコビッチは、会場の大多数を占めるフェデラーファンの声援を、脳内で自分への応援に変換していたことも明かしている。

 世界ランキング1位のジョコビッチは、フェデラーとの息詰まる攻防でほぼ常に押され気味の展開を強いられながら、2本のチャンピオンシップポイントをしのいで7-6(7-5)、1-6、7-6(7-4)、4-6、13-12(7-3)で勝利。ウィンブルドン5勝目、四大大会(グランドスラム)通算16勝目を飾るとともに、グランドスラム最年長王者というフェデラーの夢を阻んだ。

 4時間57分の戦いはウィンブルドン決勝では過去最長となり、導入1年目となった最終セットでのタイブレークで優勝が決まった。また、相手に複数のチャンピオンシップポイントを握られながら逆転で優勝を飾るのも、ウィンブルドンの男子シングルスでは71年ぶりの出来事だった。

 32歳のジョコビッチは「おそらく僕がこれまで経験した中で、精神的に最も厳しい試合だった」と話した。

「肉体的に一番厳しかったのは、(2012年の)全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament)のラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)戦で、あのときは6時間近い試合になった」「しかし精神的には、今回の試合はけた違いだった。理由はさまざまだ」

「こうして勝者としてみなさんの前に座っていられることに、興奮と喜びで胸がいっぱいだが、あと1本で試合に敗れるところだったし、あっさり負けていてもおかしくなかった」

 ジョコビッチは最終セットの第16ゲームで、2本のチャンピオンシップポイントを握られながらも生き残ると、最終的に2時間以上に及んだこのセットをタイブレークの末に獲得し、優勝をもぎ取った。

 1万4000人以上が集まったセンターコートの観客はほぼフェデラーファン一色だったが、それでもジョコビッチは心の中で、「観客の『ロジャー』コールが、自分には『ノバク』に聞こえる」ようにしていたという。

 信じられないほど強固なメンタルを発揮したかたちだが、ジョコビッチは過去にもフェデラー戦で同じような崖っぷちを経験しており、2010年と2011年の全米オープンテニス(US Open Tennis Championships)準決勝でも、マッチポイント2本を切り抜けて勝利していた。

「とにかく自信を失わないことを心がけている。冷静さを保ちながら、ボールを返し、リターンすることだけに集中するんだ。きょうはリターンがあまりうまくいかなかったけどね」「それでも、3回のタイブレークのような本当の正念場の場面では、こう言って良いかは分からないが、自分の最高のテニスができたと思う」 (c)AFP/Dave JAMES