【7月9日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領とその政権を「無能」と評した駐米英大使のメモが流出した件を受けて、トランプ氏は8日、間もなく退陣する英国のテリーザ・メイ(Theresa May)首相に対する異例の攻撃を開始した。

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 7日付の英大衆紙メール・オン・サンデー(Mail on Sunday)によると、英国のキム・ダロック(Kim Darroch)駐米大使は本国に送った機密の公電や報告メモの中で、トランプ氏は「無能」で同政権は「例を見ないほど機能不全」と評していた。

 8日に英首相官邸がダロック大使を引き続き支持する意向を示すと、トランプ氏は憤激しメイ氏を攻撃。怒りもあらわにツイッター(Twitter)に連続投稿し、「私は以前から英国とテリーザ・メイ首相のブレグジットの扱いには非常に批判的だ。彼女とその代理人たちはなんという厄介事を引き起こしたことだろう。私はどう対処すべきか彼女に言ったのに、彼女は別の方向へ進むことを選んだ」「英国にとっての朗報は、もうすぐ新しい首相が就任することだ」などと書き込んだ。

 しかし、トランプ氏の一連の投稿後も、英政府報道官は「ダロック大使は引き続き、英首相の全面的な支持を受けている」と述べた。

 トランプ氏は先月、国賓として訪英したばかり。欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)によって生じ得る損失を和らげたい英国は、主要同盟国の米国と新たな貿易協定を結ぼうとしている。だが、今回の駐米大使メモ流出は、その努力を困難にする恐れがある。

 英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)は、外務省など英政府機関で働く最大100人がこうしたメモを目にしていると指摘。その上でロンドンの新聞各紙はメモの流出源について、勢力争いが生じている与党・保守党内のブレグジット推進派に疑いの目を向けている。

 現在、メイ首相の後継争いは、現外相のジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)氏と、ブレグジット推進派で前外相・前ロンドン市長のボリス・ジョンソン(Boris Johnson)氏の一騎打ちとなっており、ジョンソン氏がリードしている。新首相は、来年1月に任期が切れるダロック大使の後任を指名することになる。

 一方、トランプ氏は次期駐米英大使に「真のブレグジット推進派を望むだろう」と指摘するのは、英紙ガーディアン(Guardian)外交エディターのパトリック・ウィンター(Patrick Wintour)氏。同氏は、ダロック大使が2016年に任命される前に駐米大使の地位を求めてあからさまにアピールしていた右派・英独立党(UKIP)の元党首で、新党「ブレグジット党(Brexit Party)」を率いるナイジェル・ファラージ(Nigel Farage)氏が、トランプ氏の求める要件を満たすと言う。

 そのファラージ氏は8日、英BBCラジオで駐米大使就任への関心を示すことは抑えながらも、ダロック大使のメモについて、控えめに言っても「非常に無責任だ」と批判。米トランプ政権を「私の友人たちがいる政権」と表現し、その政権とより良い関係を築くために自分は「非常に役立つことができるかもしれない」と述べた。(c)AFP/Jerome CARTILLIER, with Dmitry ZAKS in London