【7月7日 AFP】国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産委員会(World Heritage Committee)は5日、アゼルバイジャンの首都バクーで行っていた審査で、イラクの古代遺跡バビロン(Babylon)の世界遺産登録を決定した。1983年から30年以上にわたり、バビロン遺跡の世界遺産登録を目指してきたイラクの努力がようやく実った。今回の審査ではバビロンの他、ブラジルやブルキナファソなど34か所が対象となっていた。

 バビロンは、イラクの首都バグダッドの南方約100キロのユーフラテス川(Euphrates River)両岸に4000年以上前に栄えた古代バビロニア帝国の中心地。広大な遺跡群は10平方キロに及ぶが、まだ18%しか発掘されていない。 

 メソポタミア文明の広大な大都市バビロンは、泥れんがで造られた寺院や塔で構成される城郭都市として発展した。空中庭園やバベルの塔(Tower of Babel)、イシュタル門(Ishtar Gate)などは世界的にも有名だ。

 1800年代初頭に遺跡の発掘が始まると、様々な発掘品が海外に持ち出され、イシュタル門の一部は現在も欧州各地の博物館にある。

 独裁政権を敷いたサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領の時代には遺跡群内に新たに宮殿などが建てられ、遺跡に多大な影響を与えた上、2003年にフセイン政権を崩壊させたイラク戦争中も損傷が進んだ。

 ユネスコは5日、バビロン遺跡について「著しく脆弱(ぜいじゃく)な状態」にあると指摘。「多くの建造物は緊急に保護する必要があり、中には崩壊寸前なものもある」として「重大な懸念」を示した。

 しかし、イラクからの抗議もあり、バビロン遺跡の「世界危機遺産(World Heritage in Danger)」指定は見送られた。代替策として、地元当局と共に遺跡保護に向けた行動計画を策定するという。(c)AFP