【7月1日 AFP】男子ゴルフ米ツアー、ロケット・モーゲージ・クラシック(Rocket Mortgage Classic 2019)は30日、米ミシガン州デトロイト(Detroit)のデトロイト・ゴルフクラブ(Detroit Golf Club)で最終日が行われ、15年前の飛行機事故による両親、そして恋人の死を乗り越えたネイト・ラシュリー(Nate Lashley、米国)が念願の米ツアー初優勝を果たした。

 他選手の補欠として、最後の出場枠に滑り込んで今大会に出場したラシュリーは、初日にいきなりスコア「63」をマークして首位発進を果たすと、3日目にも同じ「63」で2位との差を6打差に拡大した。迎えたこの日も、最終18番まで危なげないゴルフを展開。スコアを2ストローク伸ばして通算25アンダーとし、2位のドック・レッドマン(Doc Redman、米国)に6打差をつけて完全優勝を果たした。

 ラシュリーは「とにかく、今はいろいろな感情がこみ上げている」「この大会に出場できたことに、本当に感謝したい。PGAツアーで勝つのがずっと夢だったし、きょうそれを実現できて、ただただうれしい」とコメントした。

 大会前は世界ランキング353位だったラシュリーは、これで3週間後にロイヤル・ポートラッシュ・ゴルフクラブ(Royal Portrush Golf Club)で行われる第148回全英オープン(The 148th Open Championship)の出場権を獲得するとともに、今後2年間の米ツアー参戦権を手に入れた。

 ラシュリーにとっては、奇跡のような頂点奪取だった。15年前の2004年、ラシュリーがアリゾナ大学(University of Arizona)の3年生だった頃、大会に出場するラシュリーの応援に駆けつけていた両親と恋人が、帰りの飛行機で墜落事故に遭って命を落とした。

 だからこそ、18番グリーンでタップインのパーパットを決めて感動的な優勝を飾り、姉と現在の恋人とグリーン上で喜び合った後、インタビューに応じるラシュリーの声は震えていた。

「きょうは家族や友人がたくさん駆けつけてくれた。これからみんなとお祝いするつもりだ」「この勝利の意味は大きい。2年分の権利を手に入れたし、これからは自信を持って戦える。(2020年の)マスターズ選手権(The Masters Tournament 2020)にも出られる。これ以上の幸せはないよ」

 レッドマンもラシュリーより先に補欠からの繰り上げが決まった選手で、米ツアーはこれが今季わずか2戦目の出場だった。しかし今回2位に入ったことで、こちらも全英オープンの出場権を獲得し、さらに今季の米ツアーの残り試合に出場できる一時会員資格を手に入れた。

 それでも、この感動的な一日の主役はラシュリーだった。悲劇の後に一度はゴルフに見切りをつけ、不動産会社で少しの間営業マンを務めたラシュリーだが、やはりゴルフを諦めきれずに再び夢を追うことを決めると、2018年に35歳のルーキーとして米ツアーに初参戦。しかし膝のけがでシーズン後半戦を棒に振る結果に終わった。

 治療を続けながらのスタートとなった今季は、なんとか賞金を稼ぎながらあまりレベルの高くない大会への参戦を続けていたが、自身メジャー初挑戦となった3週間前の第119回全米オープン選手権(2019 US Open Championship)では28位タイと健闘。補欠の枠に食い込み、前週のトラベラーズ選手権(Travelers Championship 2019)では出場機会がめぐって来なかったが、今回は開幕前日の29日に棄権した選手が出たため、出場のチャンスをつかんでいた。

 そして、2016年にAT&Tペブルビーチ・ナショナルプロアマ(AT&T Pebble Beach National Pro-Am 2016)を制したヴォン・テーラー(Vaughn Taylor、米国)以来となる、補欠からの繰り上がり出場での優勝を果たした。(c)AFP