【6月29日 AFP】白くて濃厚、風味豊かなセルビアのロバのチーズは、おいしいだけでなく健康にも良い──セルビアでロバの乳を製品化しているスロボダン・シミッチ(Slobodan Simic)さんは胸を張る。たった1キロで1000ユーロ(約12万円)もするこのチーズは、世界一高価なチーズかもしれない。

 シミッチさんと製造チームは、2012年からセルビア北部のザサビツァ(Zasavica)自然保護区で、200頭以上のロバの搾乳を続けている。

 ロバ乳はヒトの母乳に似た性質を持っているため、ぜんそくや気管支炎といった慢性疾患の治療法としても用いられるとシミッチさんは言う。「生まれたばかりの人間の赤ちゃんでも、搾乳したてのロバ乳を希釈しないまま飲むことができる」として、「自然の驚異」だと話す。

 ロバ乳に関する科学的な研究はあまり行われていないため、健康への効能を評価することは難しいが、ロバ乳には、たんぱく質が多く含まれ、国連(UN)からも、牛乳アレルギーのある人への優れた代用ミルクとして認められている。

 しかし、「世界中の誰も製造していないし、できないと思われるのが、ロバのチーズだ」とシミッチさんは言う。

 ロバ乳はチーズ製造において、つなぎとして作用するたんぱく質のカゼインの割合が極めて低く、チーズが凝固しないという。シミッチさんと製造チームは、ロバ乳をヤギ乳と混ぜ合わせることで、チーズの塊が生成されることを発見した。

 シミッチさんたちは、チーズだけでなくロバ乳のせっけんや蒸留酒もつくっている。(c)AFP