■回収されたごみのうち約4分の1が再生可能だった

 地中海は、人口密度の高い陸地に囲まれた閉鎖的な海域という問題も抱えている。

 論文審査のある米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に2015年に掲載された研究論文によると、地中海には推定1000~3000トンのプラスチックが浮遊しており、さらに海底には未知量のプラスチックが沈んでいる。同論文によると、ナイル川(Nile River)からは毎年、少なくとも1500トンのプラスチックが地中海に流れ込んでいるという。

 イタリアの海岸には、よくマッコウクジラが打ち上げられるが、胃の中には大量のプラスチックが詰まっている。

 欧州議会(European Parliament)は今年3月、2021年から欧州連合(EU)内で使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案を可決。

 イタリアでも、既存の廃棄物の取り扱いに関する法案が提出されている。現行法では、漁師が魚介類と一緒に引き揚げたごみを回収して廃棄すれば、ごみを不法に移動させた罪で起訴される可能性がある。

 海洋ごみの推定80%は陸から運ばれたもので、20%は船舶から投棄されたか、漁業関係のものとみられている。

 デサバタ氏は、「私たちの実験の意義は、海底に沈んでいるものを調査し、どれだけのものがリサイクル可能で、どうすれば、このごみを管理できるのかを明らかにすることだ」と主張。「こうした情報は、政策を決定する上で助けになるはずだ」と話す。

 デサバタ氏によれば、これまでに回収された全廃棄物のうち約4分の1が再生可能だったという。

 汚染に関する問題は、プラスチックを食物連鎖に入れないようにする対策だけにとどまらない。海面下100メートルから引き揚げた網にペンキの缶がかかっていた場合、一緒に取れた魚は汚染されており、廃棄せざるを得なくなる。漁師たちは、網にかかるプラスチックがあまりに多いため、魚を取れなくなっていると話す。

 夜間の漁を終えて港に戻ったトロール船から、魚とごみが波止場に降ろされた。「これを1か月間でなく1年間行えば、海はきれいになるだろう」と、木箱を降ろしながら船長は語った。(c)AFP/Charles ONIANS