【6月29日 AFP】月夜のイタリア沿岸沖で、漁師たちがいつものように網にかかったものを引き揚げていく。コウイカにヒメジ、そしてプラスチックごみ。だが今日は、そのごみを海には戻さない。

 イタリアで、集められたごみを分析し、可能なものは再利用する海のクリーンアップ作戦の青写真をつくる実験が、差し当たって1か月間の予定で行われている。このプロジェクトを運営する「クリーン・シー・ライフ(Clean Sea Life)」のコーディネーター、エレオノラ・デサバタ(Eleonora de Sabata)氏は、「多くの漁師はごみを海に投げ返してきたが、それは法律によって、海のごみを陸揚げすることができないからだ」と説明する。

 アドリア海のリゾート地、サンベネデットデルトロント(San Benedetto del Tronto)の沖合で、同プロジェクトに参加している約40隻の漁船がこのジレンマに苦しめられることはないようだ。プロジェクトが始まってからの1か月間で、漁師たちは毎週約1トンのごみを収集した。そのうち60%がプラスチックだった。

 ごみは毎日、ボランティアのスタッフによって波止場で記録・分別される。一部は再生ごみに回されるが、家庭ごみや産業廃棄物と一緒に処分されるものもある。だが、海に戻されるごみはない。

 プロジェクトは当初、世界海洋デー(World Oceans Day)前日の6月7日に終了する予定だったが、夏が終わるまで、数か月間にわたって続けられることになった。

 主催者は、このごみ処理方法が、イタリアの他の地域のみならず、他国にも広がることを期待している。

 プラスチックごみの大半は、使い捨てのボトルや皿、ナイフやフォークなどだが、古い漁網やムール貝の養殖網から、医療器具や複写機の部品まで、ありとあらゆるごみが交ざっている。

 漁師のクラウディオ・ウリアーニ(Claudio Uriani)さん(62)は、釣り上げた魚やイカを市場で売るために種類別にバケツに入れる。だが、最も大量に水揚げされるのはプラスチックだ。