【6月19日 AFP】カナダ政府は18日、内陸部と太平洋岸を結ぶパイプライン「トランスマウンテン(Trans Mountain)」の拡張計画を承認した。カナダ産原油の大半が割安な価格で米国に売られる中、アジアなどの新市場への輸出を目指す。同計画は論争を呼んでおり、選挙を前に大きな争点が生まれた形。

 ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は2016年、カナダの「国益」にかなうとして同計画を承認したが、先住民や環境活動家らによる訴訟や抗議を受けて進行が滞った。さらに、連邦裁判所は昨年8月、政府に計画の見直しを命令。政府は難局を切り抜けるため、エネルギーインフラ企業キンダーモルガン(Kinder Morgan)からパイプラインの所有権を44億カナダ・ドル(約3600億円)で買い取った。

 トルドー首相は、パイプラインからの税収や最終的な売却益を「カナダのクリーンエネルギーへの移行」に投資すると説明している。

 現在のパイプラインは1953年に建設されたもので、老朽化が進む。計画は、これを新たなパイプラインによって代替し、内陸のアルバータ(Alberta)州から太平洋沿岸まで1日当たり89万バレルの原油を送れるようにする内容。原油はアジアなどの新市場に輸出する。

 反対派は計画に納得しておらず、抗議運動や法的措置を強化すると明言。カナダ商工会議所(Canadian Chamber of Commerce)などの支持派も、建設が実現しないうちに勝利宣言をすることにはためらいを見せている。

 この問題はトルドー首相に政治的ジレンマを突き付けている。同首相は計画をめぐって自身の支持層から最も強い反発を受けているが、計画が頓挫した場合、カナダ最大級の産業となっている石油業界に経済危機をもたらす恐れがあるほか、環境政策をめぐりトルドー首相と各州政府との政治対立が起きる可能性もある。(c)AFP/Michel COMTE