【6月16日 AFP】陸上女子中距離のキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)の代理人は15日、セメンヤがダイヤモンドリーグ(IAAF Diamond League 2019)のラバト大会への出場を拒否したとする大会側の主張を否定し、怒りの抗議を行った。

 セメンヤに関しては、大会に出場するにはテストステロン値を下げなければならないとする新規定を国際陸上競技連盟(IAAF)が定めたが、スイス連邦最高裁判所が規定を一時停止。その後、IAAFは改めてセメンヤに規定を適用するよう求めたが、これを同裁判所が12日に却下したため、モロッコで行われるダイヤモンドリーグのラバト大会出場に支障はないはずだった。

 その中で、大会主催者は「彼女は招待状を受け取ったが、日程の都合がつかずラバトには来られない」と話し、セメンヤが800メートル出場の招待を拒否したことを示唆していた。

 これを受けて、セメンヤ側はモロッコの陸上連盟(FRMA)を非難するプレスリリースを発表。「キャスター・セメンヤはラバトでの800メートル出場の招待を拒否していない。参加できなくなったのは連盟が原因だ」と述べた。

 双方の発表を見ると、出られなくなった経緯についてはおおむね一致しているが、責任の所在の部分で見解が食い違っている。

 セメンヤ側によれば、セメンヤは6月7日に招待を受け、仏パリ発ラバト行きの12日のフライトを予約したが、出発前夜に「FRMAの会長がキャスターの出場を望んでいないという連絡が、いきなり代理人の元へ入った」。そして「ぎりぎりになっての不当な拒絶に憤った」が、「キャスターは南アフリカへ戻るしかなかった」という。

 そしてその後、代理人が何度も電話をかけたことを受け、FRMAは14日にセメンヤを再度招待したが、その段階で20時間の移動をするのは「現実的ではない」と判断した。

 一方、主催者は大会の公式ホームページで、当初セメンヤの出場を認めない方向だったものの、スイス連邦最高裁判所の決定を受け、「喜んで招待することを決めた」と主張している。

 2012年のロンドン五輪と2016年のリオデジャネイロ五輪で、800メートルの金メダルを獲得しているセメンヤは、男性ホルモン値が基準より高い「高アンドロゲン」の女子選手が400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目に参加するためには、体内のテストステロン値を人為的に下げなければならないという、IAAFの新規定と闘っている。(c)AFP