【6月11日 AFP】北朝鮮は、今も市民の恐怖心をあおる手段として公開処刑を続けているものの、国際社会の圧力の高まりを受けて執行件数は減っている可能性があるとする調査報告書が11日、韓国の団体「転換期正義ワーキンググループ(Transitional Justice Working Group)」により発表された。

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 北朝鮮は、人々に恐怖心を植え付けるために公開処刑を利用しているとの批判を長年にわたり受けている。金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長は過去に複数の最側近を処刑してきており、2013年には強い影響力を持っていた叔父の張成沢(チャン・ソンテク、Jang Song-Thaek)氏が処刑された。

 北朝鮮による深刻な人権侵害を調査している同グループが脱北者610人の証言に基づきまとめた報告書によると、この数十年で銅や牛の窃盗といった軽犯罪により数百件の公開処刑が執行されており、直近の執行は2015年だった。

 同グループによると「公開処刑の規則では、3人の銃殺刑執行官が死刑囚の体にそれぞれ3発ずつ、全9発を撃つよう定められている」。これはエリート層などに対し広く使われている手法で、「処刑方法に関する情報が国内全土に広がることを見越し、国民への脅迫を最大化する狙いがある」という。

 だが報告書で同グループは、北朝鮮が国際社会の圧力の高まりを懸念し、執行件数の抑制を強いられている可能性を指摘。「2005年以降、公開絞首刑の執行は停止されたか、執行件数が大幅に減ったとの情報があり、この変化の背景には執行の停止を求める国際社会の圧力があるとの見方もある」と説明した。

 報告書執筆者の一人、イーサン・シン(Ethan Shin)氏はAFPに対し、「非公開の処刑が増えている可能性もあるが、北朝鮮は正常な国家として認められることを目指し、死刑判決により慎重になっているようだ」と述べた。

 韓国メディアは最近、2回目の米朝首脳会談が物別れに終わったことを受け、北朝鮮の金革哲(キム・ヒョクチョル、Kim Hyok Chol)国務委員会対米特別代表が3月に銃殺の刑に処されたと伝えていた。北朝鮮の処刑に関する過去の韓国メディア報道には後に誤報と判明したものもあるが、金革哲氏の名は米朝首脳会談以降、北朝鮮の国営メディアで言及されていない。(c)AFP/ Kang Jin-kyu