■「予測の自信度が向上」

 これまでのシミュレーションでは、物質をブラックホールに向かって進ませるのに必要だと考えられる付加的な摩擦を手動で予測していた。

「それに対し今回のモデルでは、この摩擦を仮定する必要はない」と、ノースウエスタン大ウェインバーグ芸術科学学部(Weinberg College of Arts and Sciences)のアレキサンダー・チェーホフスコイ(Alexander Tchekhovskoy)助教(物理学・天文学)はAFPの取材に説明した。「今回のシミュレーションに磁場を導入すると、実際にこの磁場によって不安定性が誘発され、これが摩擦を引き起こし、その結果として円盤が中に落ちる」

 これは、ささいな細部のように思えるかもしれないが、ブラックホールがどのくらい高速で回転しているか、そしてその結果として、ブラックホールが周囲にある銀河にどのような作用を及ぼすかに直接影響を与えるものだ。

 中心から噴水のように突き出ているガスと磁場の2種類のジェットを持つ円盤が生成される今回のシミュレーションは、降着円盤の外側部分が傾いたままなのに、内側部分はブラックホールの赤道面と完全に並列になることを示している。

「ブラックホールと相互作用する物質に付随する磁場や円盤内の乱流、渦運動などの複雑化要因をすべて考慮に入れると、それによってこの並列化作用が消される可能性があるという懸念がこれまで存在した」と、チェーホフスコイ助教は指摘した。

「今回の研究では、実際には作用が消されることはなく、円盤の内側部分が実際にブラックホールと並列になることが明らかになった。これで、ブラックホールがどう見えるかについて、より自信を持って予測できるようになった」 (c)AFP/Patrick GALEY