【6月7日 AFP】ブラックホールのこれまでで最も詳細なシミュレーションを実施したとする研究結果が6日、発表された。星をむさぼり食う怪物がどのようにして物質をのみ込むかをめぐる、40年以上前からの謎を解決に導く成果だという。

 国際共同プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は4月、宇宙に散在する超大質量ブラックホールの一つの史上初となる画像を公開した。その記憶も新しい中、天体物理学者らは今回の研究でブラックホールの形成と成長の仕組みの解明に数歩近づいた。

 大型の恒星が自らの重力で崩壊する際に生まれるブラックホールは「穴(ホール)」とは程遠い、信じられないほど高密度の天体で、そこからは何物も、光ですら逃げ出せないほど強力な重力を持つ。

 ブラックホールはガス、塵(ちり)、天体の破片などの物質を吸い込む時に、周囲に降着円盤を形成する。激しく回転する、超高速に加速された膨大な量の粒子からなる降着円盤は、宇宙で最も明るい天体の一つだ。4月に公開された画像では、ブラックホール周囲のぼやけた光輪として確認できるのが降着円盤だ。

 だが、降着円盤はほぼ常に、中心にあるブラックホールの赤道面として知られる特定の方向に対して傾斜角を持つ。

 ノーベル賞を受賞した物理学者のジョン・バーディーン(John Bardeen)氏と天体物理学者のヤコブス・ペテルソン(Jacobus Petterson)氏のチームは1975年、回転するブラックホールの作用により、傾斜した降着円盤の内部領域がブラックホールの赤道面と並列になる現象を理論化した。だがこれまでのモデルでは、この現象が正確にはどのようにして起こるかを解明できなかった。

 米ノースウエスタン大学(Northwestern University)、英オックスフォード大学(Oxford University)、オランダ・アムステルダム大学(University of Amsterdam)などの天体物理学者チームは、大量のデータを高速処理し、ブラックホールとその降着円盤がどのように相互作用するかをシミュレーションするためにグラフィックスプロセッサ(GPU)を使用した。

 重要なのは、チームが採用した研究手法によって、磁気乱流を考慮するための演算能力が得られたことだ。磁気乱流は、降着円盤内で異なる粒子が異なる速度で激しく動く際に発生する。まさにこの電磁効果が、ブラックホールの中心に向かって物質を落下させるのだ。