分子標的治療薬、膵臓がんの進行を抑制 研究
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【6月4日 AFP】分子標的治療薬が膵臓(すいぞう)がんの進行を有意に減速させる可能性があるとの研究結果が2日、発表された。進行性膵臓がんと診断された患者の平均余命は1年未満とされているが、この分子標的治療薬を投与した患者は臨床試験を開始してから2年目の時点で3分の1が生存しているという。
臨床試験では特にBRCA遺伝子の変異を持つ患者に注目した。BRCA遺伝子の変異は親から子に受け継がれ、膵臓がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がんなどの発症リスクを高めることが分かっている。女優アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)さんが予防措置として両乳房の切除手術を受けたのは、BRCA遺伝子変異が検査で検出されたためだ。
BRCA遺伝子変異は、損傷したDNAを修復する人体の能力に影響を及ぼす。DNAの損傷は、過度の日光を浴びることやアスベスト(石綿)暴露などさまざまな要因に起因する。
今回の研究を主導した米シカゴ大学(University of Chicago)医療センターの腫瘍学者、へディー・キンドラー(Hedy Kindler)氏は、AFPの取材に「正常な細胞はDNAの損傷を修復できるが、BRCA変異を持つ細胞はこの損傷を修復できず、DNAに損傷があるため異常に増殖し始める」と語った。
今回の実験では、損傷を受けた細胞が自己修復するのを助けるタンパク質PARPを阻害する「PARP阻害剤」を使用した。PARP阻害剤は、BRCA遺伝子変異を持っているため修復機能が低下しがん化した細胞に対して特定的に作用し、損傷を悪化させ、最終的に細胞死に導く。
今回の臨床試験では、膵臓がん患者3300人以上にスクリーニング検査を実施し、BRCA遺伝子変異を持つ約250人を特定した。そして、これらの患者の一部に「オラパリブ(Olaparib)」と呼ばれるPARP阻害剤を、残りの患者にはプラセボ(偽薬)をそれぞれ無作為に割り当てた。