■乳児の出す音と類似

 フィッシャー氏はその後、別のアイデアを思い付いた。「ドローン(小型無人機)をグリーンモンキーの上空に飛ばすことにした。一度も見たことがなく、空中にある潜在的に危険なものにグリーンモンキーをさらすことが目的だった」と、フィッシャー氏は説明した。

 ドローンは何も知らないグリーンモンキーの上空を高度約60メートルで飛行した。サルたちはドローンに気付くと迅速に反応し、危険を知らせる鳴き声を発するとともに、避難場所を求めて急いで逃げた。

 その鳴き声は、ヒョウやヘビに反応して発する鳴き声と異なるだけでなく、東アフリカのベルベットモンキーが発するワシ警報に「そっくり」だった。

「進化的には350万年前に分岐したにもかかわらず、鳴き声の構造は本質的に変わっていなかった」と、フィッシャー氏は指摘した。つまり進化生物学用語で言いかえれば、危険を知らせる鳴き声は「高度に保存されている」と説明できる。

 同じく霊長類センターのクルト・ハマーシュミット(Kurt Hammerschmidt)氏はAFPの電話取材に対し、グリーンモンキーがドローンには反応するが、その地域を原産とする大型の鳥には反応しないという事実は、微細だが重要な違いを示していると語った。

 ハマーシュミット氏は「警戒の鳴き声は、ワシ自体に関連付けられたものではない」と指摘し「それは『飛ぶもの』という、より広範な区分に対応しているようだ」と述べた。

 サルの意味付けされた生得的鳴き声と、人間の乳児が発する音は類似していると研究チームは推測している。「子どもはまだ話せないうちから、うなり声、笑い声、泣き声など生得的な音を発している」とハマーシュミット氏と説明した。

 人間は何らかの方法で、この生得的な音から進化し、新たな意味と結び付けられた新しい音を作り出した。だが、文化と学習という層の下には、進化心理学の領域に含まれる特定の中核的反応が残存している。(c)AFP/Marlowe HOO