【5月28日 AFP】世界最高峰エベレスト(Mount Everest、標高8848メートル)の標高8000メートル以上の区域、通称「死のゾーン」の「渋滞」を生き延びたインド人のアミーシャ・チャウハン(Ameesha Chauhan)さん(29)は、今シーズンのような悲劇を繰り返さないためにも基本的な登山技術のない人々のエベレスト登頂は禁止すべきだと強く主張する。

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 エベレストではここ2週間余りですでに10人が死亡しており、大地震で雪崩が発生した2014~15年シーズン以降で最悪の死者数となっている。悪天候により登山可能な期間が短くなったことで頂上付近では長蛇の列ができ、疲労の蓄積と酸素切れのリスクが増しているのだという。

 ネパール政府は今シーズン、過去最多となる381人に登山許可証を発給。手数料は1人当たり1万1000ドル(約120万円)で、貧困国ネパールにとっては大きな外貨収入源だ。

 また、チベット側の北稜ルートでも少なくとも140人に登山許可が出ており、最終的な登頂者数は昨シーズンの807人を抜いて過去最高を更新する見通しとなっている。

 しかし凍傷の治療でカトマンズの病院に入院しているチャウハンさんによると、登山許可を得た人の多くは適切な訓練を受けておらず、誤った判断を下して「登山者自身やシェルパ(ネパール人山岳ガイド)の命を危険にさらしている」という。

■山頂で数時間足止めも

 チャウハンさんは山頂から下りるのに20分待たなければならず、中には数時間足止めを食らった登山者もいたという。

 AFPの取材に応じたチャウハンさんは、「基本的なスキルを持たず、シェルパに頼り切りの登山者もいた。ネパール政府は許可証発行の基準を見直すべきだ」「多くの登山者の酸素が切れそうになっていた」と苦言を呈した。

 今シーズンの死亡例のうち少なくとも4件は登山者の混雑が原因とされている。寒さが厳しく空気が薄い危険区域、いわゆる「死のゾーン」では複数の登山チームが時に数時間立ち往生することもあったという。

 8000メートルを超える世界14高峰を7か月で征服しようというプロジェクトを率いるネパール人のニルマル・プルジャ(Nirmal Purja)さんは先週、エベレスト山頂へと続く登山者たちの長蛇の列を撮影し、ツイッター(Twitter)で公開。画像は拡散され、熱狂するエベレスト登山への危険性を浮き彫りにした。