■ついに離陸成功

 また資金を捻出するため家族の土地を売り、マイクロファイナンスを行うNGOから5万ルピー(約3万3000円)の融資を受けた。今もその返済を続けている。

 試行錯誤の繰り返しだった。家族からは、取りつかれていると心配されもした。

 だが、ファイヤーズさんは諦めず、2年以上もあざ笑われ続け、今年2月ついに飛行機を完成させた。

 試験飛行に立ち会い、バイクに乗って並走したというアミール・フセイン(Ameer Hussain)さんによると、離陸前のスピードは毎時120キロに達し「地上約61~76センチの高度を保ちながら、2~3キロ飛行した」という。

 AFPはその主張を検証することはできなかった。

 これで自信を深めたファイヤーズさんは、自分の努力をあざ笑っていた村人たちの前で再び挑戦することを決意し、決行日は3月23日の共和制記念日(Pakistan Day)を選んだ。警察によると、飛行機の周りには国旗を手にした数百の人だかりができたという。

 だが、ファイヤーズさんはエンジンを掛ける暇もなく、駆け付けた警察官に逮捕され、飛行機も押収されてしまった。ファイヤーズさんは3000ルピー(約2000円)の罰金を支払い釈放された。

 AFPが地元警察に取材したところ、警察官の一人は、飛行機はすでに返却しており、飛行機操縦の免許や許可を取れば、飛ぶのは自由だとファイヤーズさんに伝えてあると指摘した。

 不運に見舞われたファイヤーズさんだが、ネット上では「英雄」「インスピレーションを得た」など称賛の声が上がっている。また、近くの空軍基地の司令官はファイヤーズさんの「情熱と技術力の高さ」をたたえ、飛行許可書も発行したという。(c)AFP/Kaneez FATIMA