【5月26日 AFP】妊娠した女子選手へのスポンサー料を減らし、批判を浴びていた米スポーツ用品大手のナイキ(Nike)が、契約選手の出産に関する方針を変更する見込みだと米紙が報じた。

 ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、ナイキは広報を通じて同紙へメールを送り、「ナイキ社であればもっとやれるはずですし、スポーツ界全体で女性アスリートへのサポートを改善するまたとない機会です」と述べた。出産する女性アスリートを対象とした、12か月間の成績ベースの支払いの減額を廃止する方向だという。

 妊娠した女子選手に対するナイキの方針をめぐっては、数日前に陸上短距離界のスター、アリソン・フェリックス(Allyson Felix)が批判の輪に加わった。女子の陸上選手として唯一、五輪の金メダルを6個獲得しているフェリックスは、妊娠休養中の2018年に大幅に減額された契約をオファーされたと同紙に語っている。

 同じ陸上競技のアリシア・モンタノ(Alysia Montano)やカーラ・グシャー(Kara Goucher)も、ニューヨーク・タイムズの取材に対して同様の訴えを行っている。

 2017年末にナイキとのスポンサー契約が切れる予定だったフェリックスは、契約打ち切りの心配もある中で家族を持つことを選択した。するとナイキは、それまでよりも大幅に支援金を減らした契約を提示し、「出産前後の数か月」の成績が振るわなかったとしても金銭的なペナルティーは科さないでほしいという要望に難色を示したという。

 ナイキは前週にコメントを発表し、「全競技でアプローチを標準化し、妊娠中の女性選手をサポートするようにしていますが、さらなる前進が可能であることは把握しています」「そのため今後は契約の書面に、われわれの方針をさらに強化する条項を盛り込む予定です」と述べている。

 またニューヨーク・タイムズとブルームバーグ(Bloomberg)の報道によれば、社内では幹部のエイミー・モンターニュ(Amy Montagne)氏がフェリックスの体験を「遺憾」に思っていることを社員に伝えたという。モンターニュ氏は今回の件を「屈辱的な出来事」と述べ、契約中の女子選手に連絡を取って方針の変更を伝えていると続けた。

 五輪2大会に出場しているグシャーは、ニューヨーク・タイムズの報道を慎重に歓迎しながらも、ナイキからの連絡はまだないと明かしている。

 2010年に男の子を出産したグシャーは、ツイッター(Twitter)に「本当にうれしいけれど、大きな疑問がある。ナイキは援助停止をやめるのか、それとも単に減額だけの話なのか」「私や知り合いの女子選手は、減額ではなく援助が止まった。方針を書面で確認したいし、そうしたら喜ぼうと思う」と書き込んだ。(c)AFP