【5月22日 AFP】米ワシントン州は21日、遺体を園芸用土にする埋葬方法を米国の州として初めて合法化した。ひつぎを使った埋葬や火葬で生じる二酸化炭素の削減を目指す趣旨の法案に、環境派の知事が署名した。

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 新法は来年5月に発効。同州内で死去した人の遺体は、園芸用土に変えられる「再構成葬」と呼ばれる方法で埋葬できるようになる。

 このサービスを最初に提供するのは同州シアトル(Seattle)を拠点とする企業「リコンポーズ(Recompose)」。同社の創業者で、合法化に向けてロビー活動を行ってきたカトリーナ・スペード(Katrina Spade)氏は10年ほど前、30歳になり自身の死について深く考えるようになったことがきっかけでこの埋葬方法に興味を持ったという。

 ワシントン州立大学(Washington State University)と共同開発し、献体を使って実験を行ってきたこの方法は、木材チップとアルファルファ、わらが詰まった六角形のスチール製コンテナに遺体を安置すると、30日以内に微生物によって分解されるというもの。骨や歯も分解されるという。最終的にできるのは、乾燥してふわふわした養分豊富な土で、地元の養樹園で購入できる園芸用土に似ている。

 リコンポーズ社の方法は、数十年にわたり家畜の死骸に使われてきたものと同じで、ワシントン州立大学の実験の結果、遺体に用いても安全であることが分かった。

 スペード氏によると、「天然有機還元葬」の提供予定価格は5500ドル(約61万円)。火葬よりもやや高いが、ひつぎを使った埋葬よりは安い。

 米国では地球に優しい「グリーン」な埋葬への関心が高まっている。米国では現在、複数の企業がオーガニックなひつぎや、自治体の条例で認められたシンプルな埋葬布にくるんでの埋葬サービスを提供している。

 しかし、遺体を普通の土に返すことに誰もが積極的なわけではない。特にカトリック教会は、この埋葬方法を批判している。

 ワシントン州カトリック協議会(Washington State Catholic Conference)のジョゼフ・スプラグ(Joseph Sprague)事務局長は、法案を審議した州議会の司法委員会に送った文書で、「このような方法で遺体を取り扱うと、遺体に十分な敬意を払うことができないとカトリック教会は考えている」と述べていた。(c)AFP/Laurent BANGUET