■「おばあさん仮説」

 研究チームは今回、女性が生殖期を終えた後も長生きし、自らの遺伝子を存続させることができるのは、子の繁殖の成功を確実にすることによるものだとする、いわゆる「おばあさん仮説」について、暫定的な証拠が得られた可能性があると考えているという。

 人類学者らがヒトに対して適用しているこの説が、ボノボの個体群にも当てはまる可能性があると、シュルベック氏は考えているのだ。

 同氏は、この行動が母親の寿命に及ぼす恩恵について、より長いスパンでの調査を通じて確認したいと話しており、また息子の繁殖相手となる新たな雌が群れに加わることに対して母親が歓迎の行動を示すかどうかをめぐっても、今後の調査では対象となる予定としている。

 さらには、男女平等で大半が平和的なボノボ社会と、最上位の雄が主導するチンパンジー社会との間の違いを調べることで、ヒトの進化的過去に関する手掛かりが得られる可能性があると、シュルベック氏は指摘する。ボノボ社会では、メンバーが社会的結束を高めるために異性間と同性間の両方で性的な行為を行うのだ。

「一つ明確にしておかなければならないのは、われわれはボノボやチンパンジーから進化したのではなく、彼らと共通の祖先を持つことだ」と、シュルベック氏は話す。

「われわれとそれに最も近い現存する近縁種とを比較することで、選択圧の下で進化した可能性のある形質についての知識が得られるかもしれない」 (c)AFP/Issam AHMED