■女権社会

 個体群の観察中には、ボノボとチンパンジーの双方において息子を手助けしようと試みる母親の姿を見ることができた。しかし、その成功率ではボノボの方がはるかに高かった。その理由はボノボの社会では、雌が最高位を占めるからだ。一方、チンパンジーの社会で支配的なのは雄だ。彼らは、群れの最高位を決めるためにお互いに対立しあうことを続ける。

 動物界においてボノボとチンパンジーの類人猿2種は、ともにヒトに最も近い近縁種とされ、そのDNAの約99%を共有している。

 AFPの取材に対しシュルベック氏は、ボノボの母親が「群れの中でのパスポート」のような働きを持つと語り、「母親のすぐ近くにいることで、その息子もまた群れの中心的存在となる。その地位では、交尾を含む、他の雌との関係をより多く持つことが可能となる」と説明した。

「非常に魅力的な雌がいる場合、母親がずっとその雌のそばを離れず、母親の陰に息子の雄がいるのが確認できる」

 しかし、母親が高い地位を失うと、息子の地位も下落する。すると、それ以降の交尾の試みでは、その成功率もやはり低下するとされた。

 他方で、ボノボの母親は息子のライバルたちによる交尾の試みを邪魔するだけでなく、求愛や交尾を妨げようとするライバルたちから自分の息子を守ったりもしたという。