【5月21日 AFP】ロシアの有力日刊紙コメルサント(Kommersant)で20日、ベテラン記者2人が解雇されたことへの抗議として政治部デスク全員が退職した。同国のメディア産業では、ほぼすべての新聞社が政府の規制に従っており、今回のような抗議は異例。

 これに先立つ同日、同紙のグレブ・チェルカソフ(Gleb Cherkasov)副編集長は、経営陣がスクープ記事を書いたベテラン記者2人を退職に追い込んだことを受け、自身を含むコメルサントの政治部デスクの11人が退職すると発表していた。

 スクープ記事を書いたのは、同紙在籍10年を数えるイワン・サフロノフ(Ivan Safronov)、マキシム・イワノフ(Maxim Ivanov)両記者。記事は先月書かれたもので、ロシアの上院議長が現職のワレンチナ・マトビエンコ(Valentina Matviyenko)氏からセルゲイ・ナルイシキン(Sergei Naryshkin)対外情報局(SVR)長官に交代する可能性があるとしていた。

 コメルサントのレナタ・ヤムバエワ(Renata Yambaeva)副編集長は両記者の解雇について、同紙の編集部員らに対する最近の圧力の一例にすぎないと語っている。反政府活動家らは、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は権力の座に就いてからの20年間で批判者を抑圧し、ロシアメディアの大半を政府の管理下に置いたとして同大統領を非難している。

 コメルサントは2006年、鉱工業で財を成した政府寄りの富豪、アリシェル・ウスマノフ(Alisher Usmanov)氏に買収された。ウスマノフ氏の広報担当者は電子メールを通じて声明を出し、同氏は編集方針や人事に介入していないと説明している。コメルサントのウラジーミル・ジェロンキン(Vladimir Zhelonkin)編集長は、サフロノフ、イワノフ両記者が解雇されたのは「報道の基準」に違反したためだと説明した。(c)AFP/Anna SMOLCHENKO